2020 Fiscal Year Research-status Report
時計遺伝子を基盤に形成される膵癌間質の特性と、画像診断への応用
Project/Area Number |
19K16763
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
後藤 慎太郎 弘前大学, 医学研究科, 助手 (00826901)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 膵癌 / 癌微小環境 / 癌関連線維芽細胞 / 時計遺伝子 / 放射線画像診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで,生体の概日リズムを形成する時計遺伝子DECが,癌細胞による血管新生に関与していることを分子生物学的に明らかにしてきた.また,我々は,膵癌に類似した病理組織学的特徴を有する胆管癌を用いた臨床病理学的研究において,癌間質に存在する線維芽細胞(癌関連線維芽細胞)の増生が予後不良因子であることを解析してきた. 2019年度は,術前化学療法が行われていない60例の膵癌症例に対し,病理組織学的特性と造影ダイナミックCTの時間濃度曲線との相関を解析し,時間濃度曲線から癌細胞の密度,癌関連線維芽細胞の密度,癌間質の微小血管の密度が推測可能であることが示された.こうした病理組織学的特性は,膵癌の悪性度の評価に重要な情報であり,これを画像検査を用いて非侵襲的に求めることが出来るのは膵癌の治療戦略上,重要な意義をもつと考えられる. 2020年度は,術前化学療法が行われた50例の膵癌症例に対し,術前化学療法が行われた膵癌症例と同様の手法を用いて,病理組織学的特性と造影ダイナミックCTの時間濃度曲線との相関を解析した.その結果,術前化学療法が行われていない膵癌症例と同様に,術前化学療法が行われた膵癌症例においても,時間濃度曲線から癌細胞の密度,癌関連線維芽細胞の密度の推定が可能であることが示された.以上から,造影ダイナミックCTを用いることで,術前化学療法による膵癌の病理学的治療効果判定を評価できる可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は,化学療法未施行の膵癌症例60例に対し,病理組織学的特徴と造影ダイナミックCTの時間濃度曲線との相関について解析を行うことで,時間濃度曲線から癌細胞の密度,癌関連線維芽細胞の密度,癌間質の微小血管密度を推定可能であることが示され,以上の基礎的実験結果を国際誌(Oncology Letters)に報告した.これにより,膵癌において放射線画像診断と病理組織学的研究との橋渡しが可能となった.現在は,術前化学療法が施行された膵癌症例に対して同様の実験を行い,術前化学療法によって時間濃度曲線と病理組織がどのように変化するかを解析中である.
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Strategy for Future Research Activity |
術前化学療法によって時間濃度曲線と病理組織がどのように変化するかを解析し,化学療法前後の時間濃度曲線から膵癌の病理学的治療効果判定を捉えることが可能であるかを実証する.時間濃度曲線と病理組織学的特性に関する新知見と,これまでの我々の時計遺伝子DECに関する知見を総合し,時間濃度曲線を用いた,時計遺伝子DECを標的とする膵癌に対する新たな非侵襲的な検査手技の確立を目指す.
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Research Products
(5 results)
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[Book] 胆と膵2020
Author(s)
後藤慎太郎1), 吉澤忠司1), 清野浩子1), 赤石隆信1), 小笠原宏一1), 羽賀敏博1), 諸橋聡子1), 鬼島宏1)
Total Pages
603-608
Publisher
医学図書出版
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[Book] 胆と膵2020
Author(s)
後藤慎太郎1), 吉澤忠司1), 諸橋聡子1), 小笠原宏一1), 清野浩子1), 赤石隆信1), 羽賀敏博1), 鬼島宏1)
Total Pages
897-901
Publisher
医学図書出版