2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞外マトリックス制御による悪性末梢神経鞘腫瘍に対する新規治療
Project/Area Number |
19K16769
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
生田 国大 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (40732657)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 肉腫 / 細胞外マトリックス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、腫瘍における細胞膜を含む細胞周囲環境を制御により抗腫瘍効果を獲得する点で従来の治療法とは異なる。悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)は化学療法や通常の放射線の治療効果が不十分であり、その標準治療は手術治療のみである。現在のところ、MPNSTに対して見込みのある新規薬剤はないのが実情である。本研究の目的は、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)においてヒアルロン酸合成阻害剤である4-methylumbelliferone(4-MU)による既存抗がん薬の抗腫瘍効果の増強作用を評価することで、実現可能な治療戦略を開発することである。令和1年度の研究実績としては、ヒトMPNST細胞株(sNF96.2、sNF02.2)を用いたin vitro実験を開始した。4-MU 投与下における腫瘍細胞周囲および細胞内ヒアルロン酸の評価について、particle exclusion assay にて細胞周囲マトリクスの可視化、ELISA にて細胞内/細胞周囲/培養液中のヒアルロン酸濃度測定をおこなった。ヒアルロン酸合成酵素(HAS1-3)とヒアルロン酸受容体CD44 発現についてペルオキシダーゼ標識した抗体による細胞免疫染色とmRNA 解析にて評価した。さらに、HAS1-3 とCD44 のsiRNA によるknockdown 条件下において、腫瘍原性がどう変化するか観察するためにMTS assay、invasion assay、migration assay により評価した。 臨床検体でのvalidityを評価するために、MPNST患者の腫瘍組織を採取して培養、継代をおこない細胞株を樹立した。この細胞株についても同様に、上記アッセイ、解析を行う予定としている。ヒトMPNST細胞株による皮下移植マウスモデルの作製と生存解析、および移植腫瘍を用いたex vivo実験については、今年度の課題としている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
4-MUの抗腫瘍効果について、ヒトMPNST細胞株を用いた皮下移植マウスモデル作製(in vivo)は予定通り完了している。しかし、in vitroにおいて抗がん薬の選定が済んでいないため、当面はヒトMPNST細胞株における各種抗がん薬のアッセイが優先される。遅れている理由として、MTTアッセイやアポトーシスアッセイをはじめとするin vitro実験では、ヒトMPNST細胞に対するダメージが臨床血中濃度を用いた場合に強く表出してしまい、各種抗がん薬間の有意差を抽出することができなかった。そのため、現在は細胞株に対する至適濃度を同定している途中である。また、このたびのコロナ禍による影響で、新規細胞株の購入や搬入が遅延している。本学においては購入を仲介する業者の立ち入り制限もあり、年度末からの実験は進んでいない。今後、消耗品の不足や施設規約による基礎研究・動物実験の制限により、さらに本研究の進捗が遅れる可能性がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
有望な候補抗がん薬を抽出して、薬剤輸送体に対する4-MU の作用の解析をin vitroで行う。MPNST 細胞株において、膜蛋白の薬剤輸送体MDR1、MRP1、BCRPのmRNA と蛋白発現を評価。各輸送体の抗体を用いて細胞免疫染色を行い、抗がん薬および4-MU 投与による発現変化を評価する。各輸送体のmRNAと蛋白量についてリアルタイムPCR、ウェスタンブロッティングにより解析する。MPNST 異種移植マウスモデルにおける腫瘍原性の評価 (in vivo)について、抗がん薬と4-MU 併用群、4-MU 投与群、抗がん薬投与群、コントロール群(vehicle)における抗腫瘍効果、遠隔転移抑制、生存率曲線による生命予後を解析する。抗腫瘍効果については腫瘍重量および肺転移数の解析により局所および遠隔転移に対する効果を評価する。各群の異種移植腫瘍におけるヒアルロン酸、ヒアルロン酸合成酵素(HAS1-3)、薬剤輸送体蛋白発現を組織染色およびELISA(ヒアルロン酸)、mRNA(HAS1-3、薬剤輸送体蛋白)、ウェスタンブロッティング(薬剤輸送体蛋白)を評価、比較する。
|
Causes of Carryover |
実験計画書では、6種類の抗がん薬(ドキソルビシン、イフォスファミド、エトポシド、エリブリン、トラベクテジン、ヴォトリエント)を用いたMPNST細胞株での実験を計画していた。しかし、これらの既製薬剤パネルはなく、それぞれの薬剤を購入して調整・使用している。臨床使用ではない場合の抗がん薬の購入手続きや企業への確認に時間を要した。また調剤法の確認を含めて、2019年度は2種類の抗がん薬でまずin vitro実験を行ったため、次年度以降に残りの抗がん薬を用いた実験に対する使用額が発生している。使用計画として、抗がん薬の購入費、各種アッセイで用いる抗体・試料の購入に使用する。また、マウスの飼育費と購入に研究費を使用する。今後、研究結果の発表に関連する学会および論文校正費用、また研究に関連する書籍の購入費用に研究費を使用する。
|