2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K16771
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水野 礼 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (30829487)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 二光子顕微鏡 / FRET / ERK / 大腸癌 / 好中球 / 生体内イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、大腸癌の肝転移において、癌の微小環境である好中球の関与が注目を集めている。従来、癌細胞と好中球の相互作用の研究は、主にin vitroで行われ、必ずしも生体内の状態を反映していなかった。本研究は、二光子顕微鏡による生体内イメージング法と、ERKのFRETバイオセンサーを発現するトランスジェニックマウスを用いて、『生理的な』環境である生体内における大腸癌肝転移過程の可視化を行うものである。これにより、癌細胞と好中球の相互作用におけるERK活性の時空間的情報を得ることができ、大腸癌の肝転移形成に関する新たなメカニズムの解明、新しい治療標的、マーカー探索などに貢献する可能性がある。前年度、我々は、ERKのFRET biosensor(EKAR-EVnes)を全身に発現するトランスジェニックマウスのSPF化を行い、このマウスと二光子顕微鏡を用いての肝臓の生体内イメージングの系の確立を行った。また、マウス大腸癌細胞株MC38細胞およびCMT93細胞にmCherryおよびERKのFRET biosensorを導入した。これらの細胞を上記トランスジェニックマウスの脾臓に注入する脾注肝転移モデルを作成した。この方法で、肝臓の微小血管に癌細胞がTrapされる過程を観察でき、その周囲に好中球が集まってくる過程を観察することができた。今年度は、腫瘍細胞と好中球の相互作用の中でも、特に、Neutrophil extracellular trap(NET)の現象に着目し、NET形成が大腸癌の進展に及ぼす影響についての詳細の検討に焦点を絞り、in vitroでのNET誘導およびNET形成過程における好中球のERK活性のイメージングを行った。また、ヒト大腸癌手術検体を用いて、腫瘍近傍におけるNET形成と予後・Stageなどの関係についての検討も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述の通り、我々は、ERKのFRET biosensor発現マウスと二光子顕微鏡を用いての、安定した肝臓の生体内イメージング法を確立した。これにより約2時間程度の短時間の肝臓イメージングが可能となった。また、マウスの大腸癌細胞株に蛍光タンパク質を導入し、脾注肝転移モデルを作成し、肝臓の毛細血管内に癌細胞がトラップされる像を撮影することができた。しかしながら、今年度はCOVID-19の世界的蔓延の影響を受けて、二光子顕微鏡などの共通機器の使用が制限を受け、生体内イメージングなどの観察に支障をきたした。そのため、Intravital imagingを継続していくことが一時的に困難な状況に陥った。そこで、In vitroの研究や、ヒト手術検体を用いた研究に切り替えて研究を継続してきた。そのため、当初の予定からやや遅れをとっていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、生体内イメージングの実験では、実験のN数を増やしていく必要がある。実験の性質上、生体内観察で見えた像から情報を収集して、解析を行っていく必要がある。生体内観察は、生きたマウスを使用するため、観察途中でのマウスの死亡など予期せぬトラブルが生じることがあり、実験数の集積が必須となる。そのた め、マウスの交配を行い、必要十分の数のトランスジェニックマウスを確保する必要がある。また、In vitro実験においては、NETの誘導過程における分子メカニズムの検討を行い、その後、生体内イメージングで同様の現象が観察できるかの検討を行う予定である。そして、研究成果を論文化という形でまとめる予定である。しかしながら、今後も、COVID-19の影響で、京都大学での共同機器である二光子顕微鏡が使えない状態に再度陥る可能性も考えられ、柔軟な研究方針の検討が必要になると考える。
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Causes of Carryover |
(理由)有効な利用の為、少額の繰越金が生じた。 (使用計画)次年度の物品費に充当の予定である。
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