2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K16771
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水野 礼 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (30829487)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 肝転移 / NET / 好中球 / 遊走能 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は,二光子顕微鏡を用いたマウス肝臓の生体内イメージング法を確立した.また,大腸癌細胞株の脾注肝転移モデルを作成し,肝臓の毛細血管内に癌細胞がトラップされる像の撮影に成功した.この際,癌細胞の近傍に好中球が近接していることを確認し,好中球と癌細胞が相互作用している可能性が示唆された.近年,一部の好中球が腫瘍促進的に作用することが報告されており,ここでも好中球が癌に促進的に作用している可能性が考えられた.我々は好中球が癌に促進的に働くメカニズムの一つであるNeutrophil extracellular traps(NET)との関連について検討を行った.StageⅠ-Ⅲの大腸癌患者133例の手術標本の免疫染色から,NET高発現群でRFSが有意に短縮されることが判明した.また,StageⅡ-Ⅲ大腸癌患者67名の術前血清を用いたELISAによる解析でも,同様の結果が得られた.次にNETが癌細胞に与える影響について,NET-Conditioned medium(CM)を添加して,in vitroで大腸癌細胞株の増殖能とと遊走能を調べたところ,NET-CMは増殖能には影響を与えなかったが,遊走能は有意に亢進した.また,NETによって放出される好中球エラスターゼの阻害剤(Silvestat)によって,NET-CMによる遊走能の亢進は抑制されることが判明し,NETによる遊走能促進には好中球エラスターゼが重要な役割を果たしていることが判明した.これらの結果を,in vivoで検討した。大腸癌細胞株の脾注肝転移モデルにおいても,NETを同時に注入した群で肝転移の形成が促進され,Silvestat投与群で肝転移形成が有意に抑制された.一方,癌細胞の皮下腫瘍モデルでは,NET注入による増殖能に対する影響は見られず,in vitroと同様の結果が得られた.現在,これらの結果の論文執筆中である。
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