2019 Fiscal Year Research-status Report
オルガノイド培養システムを用いた癌幹細胞の特性とオートファジー活性との関係性
Project/Area Number |
19K16775
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
笠木 勇太 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (70838937)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 食道癌 / 癌幹細胞 / オルガノイド / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
食道癌は悪性度の高い癌種のひとつで、いまだ治療成績は満足できるものではない。近年、治療抵抗性や転移・再発の原因に癌幹細胞の存在が重要視され、その研究に少数の単細胞を3次元培養するオルガノイド培養システムが積極的に取り入れられている。 癌幹細胞の研究が進むにつれ、癌組織は分化度の異なる多様な細胞から構成されると考えられるようになった。癌幹細胞自体は自己複製能と多分化能を合わせもつ細胞集団であり、抗癌剤や放射線治療に感受性のある癌細胞は傷害されるが、治療抵抗性をもつ癌幹細胞は生き残り、それらの細胞が増植・分化し、腫瘍を再形成すると考えられている。そのため、癌幹細胞は再発や治療抵抗性の主原因と考えられているが、その特徴や機能は未だ不明な部分が多い。 オルガノイド培養システムは、組織や培養細胞から分離した少数の単細胞を基底膜マトリックス(MatrigelTM)に包埋・3次元培養することで、生理的かつ実質的な構造物をin vitroに作成する画期的な培養方法である。この培養方法を用いると、オルガノイド内での細胞間シグナル伝達や微小環境、幹細胞の自己複製能や増殖・分化、構成細胞の多様性が観察可能である。 DeWordらは、食道基底細胞は均一な細胞集団ではなく、いくつかの異なった性質を持った細胞から構成されている報告しており、申請者は癌幹細胞も同様に異なる性質を持った細胞からなると予測、その機能維持や分化過程にオートファジーが重要な役割を担っていると考えた。本研究は食道癌幹細胞のマーカーとしてDeWordらの報告をもとに、免疫チェックポイント分子であるCD73に着目、癌幹細胞のオートファジー活性意義につてオルガノイドを用い検証することを目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト食道上皮細胞オルガノイドにおける基底細胞の多様性とオートファジー活性を検討するため、ヒト食道上皮細胞株を用いてin vitroにオルガノイドを作成を試みているが、オルガノイドの安定培養に苦慮しており、再現性を持ったオルガノイドの培養方法を現在開発中である。また、培養したオルガノイドをDeWordらの報告をもとに、CD73およびItgβ4の発現についてフロウサイトメトリーで解析を行うにあたり、オルガノイドの処理条件やフロウサイトメトリー検出条件を設定中であるが、再現性のある結果を得れるためにもうしばらくの試行を有する状態である。 オルガノイドからのパラフィン切片作成はほぼ安定して行えており、今後免疫染色等で幹細胞因子(Sox2、K14等)、分化因子(IVL、FLG)、オートファジー因子(LC3等)について検討予定である。 ヒト食道上皮細胞オルガノイドと並行し、食道癌細胞株および食道癌生検組織からのオルガノイドを作成を同様に試みているが、上皮細胞と同様に安定作成に苦慮している。特に食道癌組織からの作成において、単細胞とする場合の酵素処理条件等の設定が繊細で、技術的な改善も必要である。また、安定培養のためには培地についてもさらなる改良が必要と考えており、組織からのオルガノイドを再現性を持って作成するにはまだしばらくの時間を要すると予測される。
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Strategy for Future Research Activity |
食道上皮細胞、食道癌細胞株および臨床検体癌組織からの安定したオルガノイド作成法を確立するため、培養培地や培養期間といった条件を調整していく予定である。また、フロウサイトメトリーやRNAシークエンス可能なオルガノイドの資料調整条件を確立し、それらのアッセイを試行する予定である。 オルガノイドが安定供給可能となれば、CD73およびItgβ4発現についてフロウサイトメトリーにて解析し、得られた各細胞分画においてセルソーティング行い、RNAシークエンスにて幹細胞因子(Sox2、K14等)、分化因子(IVL、FLG、Notch1,3等)、オートファジー因子(LC3、Parkin等)を網羅的に解析、各細胞集団の特徴とオートファジー活性の関係について明らかにする予定である。 同様の検討を食道癌生検組織オルガノイドでも行い、特に抗CD73抗体、オートファジー阻害剤の抗腫瘍効果について検討する。食道癌オルガノイドに坑CD73抗体、オートファジー阻害剤を加え、その抗腫瘍効果をオルガノイドの大きさおよび増殖活性をWST-1アッセイにて検証、同時にCD73、Itgβ4発現についても観察し、どの分画が減少するかを確認する予定である。 また、当科で所有する食道癌切除標本にて、CD73およびLC3発現について免疫組織学染色行い、その発現と臨床病理学的因子および予後について両因子の関係性について解析することとしている。
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