2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K16799
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長谷川 加奈 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (20777370)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多発性骨髄腫 / CAR T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
私はこれまで多発性骨髄腫に対する活性型インテグリンβ7を標的とするCAR T細胞療法の開発を主たるテーマとして行ってきた。CAR T細胞療法は血液がんに対しては大成功を収めているが、今のところ固形がんに有効なCAR T細胞はなく、その開発が求められている。固形がんに有効なCAR T細胞の開発のためには、がん局所における免疫抑制機構の理解とその制御と共に、CAR T細胞に対する慢性の抗原刺激による疲弊を防止することが大切である。当初、本研究では、腫瘍微小環境による免疫抑制に焦点を当てる予定であったが、活性型インテグリンβ7を標的とするCAR T細胞による皮下腫瘍モデルの治療実験において腫瘍残存のメカニズムを探る中で、T cell intrinsicな疲弊がその大きな原因になっていると考え、それを制御する因子を同定することを目指すことにした。具体的には、CRISPR gRNAライブラリーを用いたランダムノックアウトを応用し、CAR T細胞の腫瘍局所での疲弊を制御する因子の同定を目指している。ヒトT細胞にMMG49 CAR と共にlentiviral CRISPR gRNAライブラリーを導入した後、Cas9タンパクをelectroporationすることにより、各細胞において一つの遺伝子がノックアウトされたMMG49 CAR T 細胞集団を作製(Shifrut, E. et al, Cell 175:1958-1971, 2018)し、骨髄腫皮下腫瘤を有するマウスに投与する。2週後に残存した腫瘤を取り出し、投与したCAR T細胞に比べ腫瘍組織に浸潤するCAR T細胞においてより高頻度にノックアウトされている遺伝子を同定することにしており、現在その予備的検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RPMI8226細胞などの骨髄腫細胞を皮下に移植しておいた免疫不全マウスに我々の開発した活性型インテグリンβ7を標的とした CAR T細胞(MMG49 CAR T細胞)の投与を行うと、腫瘍は完全に消失する。しかし、投与する細胞数は変えずに、投与時期を遅らせていき、腫瘍が非常に大きくなってからCAR T細胞の投与を行った場合には、腫瘍の完全な消失には至らない。残存した腫瘍において標的抗原である活性型インテグリンβ7の発現は保たれているので、腫瘍側の免疫逃避が効果不十分の原因ではなく、CAR T細胞が腫瘍微小環境内で疲弊し増殖・機能しないことが腫瘍残存の原因と考えられる。そこで、CAR T細胞の疲弊を制御する因子を同定することを目指すことにした。具体的には、CRISPR gRNAライブラリーを用いたランダムノックアウトを応用し、CAR T細胞の腫瘍局所での疲弊を制御する因子の同定を目指しており、現在その予備的検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトT細胞にMMG49 CAR と共にlentiviral CRISPR gRNAライブラリーを導入した後、Cas9タンパクをelectroporationすることにより、各細胞において一つの遺伝子がノックアウトされたMMG49 CAR T 細胞集団を作製(Shifrut, E. et al, Cell 175:1958-1971, 2018)し、骨髄腫皮下腫瘤を有するマウスに投与する。2週後に残存した腫瘤を取り出し、投与したCAR T細胞に比べ腫瘍組織に浸潤するCAR T細胞においてより高頻度にノックアウトされている遺伝子を同定する。得られる候補分子の中には、T細胞の疲弊に関与する分子だけでなく、遊走、浸潤、増殖などに関連する分子も含まれる。そこで次に、候補となった遺伝子を欠損させたCAR T細胞を作製し、上述の皮下腫瘍モデルにおいて、どのようなメカニズムで腫瘍に浸潤したCAR T細胞が長期にわたって生存、増殖できているのかを詳細に検討する。また、候補の分子に対する阻害剤となる低分子が存在する場合には、その投与により同様の効果が得られないかを検討する。
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