2020 Fiscal Year Research-status Report
がん患者末梢血浮遊DNAの全身性炎症反応への役割の解明
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19K16827
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野口 卓郎 北海道大学, 医学研究院, 助教 (40814554)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / 自然免疫応答 / 核酸受容体 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
1)腫瘍細胞死により腫瘍細胞から放出されるcfDNAの腫瘍微小環境への影響を検証するin vitro実験系を確立した。ヒトEGFR変異陽性非小細胞肺癌細胞株を、EGFR変異を標的とした分子標的薬であるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬で治療すると、培養上清中のcfDNA濃度が有意に上昇することを明らかとした。次に、このcfDNAの自然免疫系への影響を解析するために、IRFレポーターヒト単球細胞株を得た。このヒト単球細胞株は、腫瘍細胞由来cfDNAを取り込むことにより、IRFレポーターシグナルを誘導した。一方で、このヒト単球細胞株のSTINGをノックアウトした場合、腫瘍細胞由来cfDNAの取り込みにより観察されたIRFレポーターシグナルは消失した。これら結果は、腫瘍由来cfDNAはSTING依存性に自然免疫経路に関与することを示唆する。 2)EGFRチロシンキナーゼ阻害薬治療下のEGFR変異陽性非小細胞肺癌患者血漿中におけるcfDNA濃度の解析を行った。興味深いことに、治療効果を認める患者において、cfDNAの濃度は治療後有意に低下していた。In vitroの結果ではEGFR変異陽性肺癌細胞周囲のcfDNA濃度は治療により上昇することが示されたことから、EGFR変異陽性肺癌患者における腫瘍微小環境と末梢循環系におけるcfDNAの代謝には異なった制御機構が備わっている可能性が示唆された。 3)健常人末梢血からCD14陽性細胞由来マクロファージの分化誘導実験系を確立した。従来型で提唱されるM1/M2マクロファージに加え、そのサイトカインの組み合わせにより誘導される形質変化を評価することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腫瘍由来cfDNAが免疫細胞核酸受容体の下流経路であるSTINGを介して自然免疫応答シグナルを誘導することを明らかとした。そして健常人単球由来マクロファージの分化誘導系を確立した。所属施設臨床研究プロトコール承認を新たに得て、がん患者末梢血を用いた研究を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍由来cfDNAに対するヒトマクロファージの自然免疫応答を分子生物学的手法を用いて解析する予定である。また、さらに症例を蓄積し、臨床情報とcfDNA濃度の関連性を評価していく予定である。
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