2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel cancer treatment aimed at overcoming drug resistance
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19K16834
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
宍戸 裕二 鳥取大学, 医学部附属病院, 医員 (00812702)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 5-アミノレブリン酸 / フェロトーシス / 薬剤耐性癌細胞 / 食道癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「5-アミノレブリン酸(5-ALA)が食道癌に対してフェロトーシスを誘導することを明らかにし、薬剤耐性癌細胞に対する治療応用を目指す」ことである。フェロトーシスは腫瘍細胞においてはグルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)により抑制されており、さらにヘムオキシゲナーゼ1(HMOX1)の発現亢進によりフェロトーシスが誘導されるとの報告がある。我々は先行実験にて食道癌細胞株KYSE30に5-ALAを投与し、RNAアレイで評価すると最も誘導されている経路の一つにフェロトーシスがあり、特にGPX4が抑制、HMOX1が高発現することを確認していた。 これまでの研究成果として、まずGPX4、HMOX1の食道癌における臨床的意義を評価するため食道癌切除検体での免疫染色を行い、GPX4陽性、HMOX1陰性は食道癌において予後不良因子であることを確認した。また、食道癌細胞株に5-ALAを投与するとRNAレベル、蛋白レベルにおいてもGPX4やHMOX1の発現を調整していることが分かった。5-ALAの癌細胞に対する抗腫瘍効果については先行実験で既に確認していたが、この抗腫瘍効果はフェロトーシス阻害薬であるフェロスタチン-1にて抑制されるため、5-ALAによってフェロトーシスが生じていることが証明された。最後に食道癌細胞株を皮下移植したヌードマウスに対して5-ALAを投与したところ、5-ALAを投与していないものと比較し有意に腫瘍縮小効果が認められた。また、同マウスから摘出した腫瘍を免疫染色すると、GPX4が抑制され、HMOX1が発現していた。これらのことから、細胞レベル・生体レベルにおいて5-ALAはGPX4、HMOX1を介して食道癌細胞に対してフェロトーシスを誘導し、抗腫瘍効果を発揮することが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の該当年度における実験計画は大きく分けて(1) 5-ALAがフェロトーシスを誘導する経路のメカニズム解析および(2) in vivoにおける5-ALA効果の検証 であった。(1)については前述の通り、RNAアレイによる網羅的解析結果の実証を十分に行うことができ、HMOX1とGPX4が5-ALAによって制御される因子であることを確かめた。さらにフェロトーシを検出する種々の実験系によりある程度の結論を得ている状態である。(2)については、複数回の動物実験により、生体における5-ALA効果の再現性を確認できたところである。これに関しては、得られた検体をさらに精密に解析し、5-ALAの効果をより深く分析するとともに必要に応じて更なる動物実験を行うことが可能であり、動物実験を次年度中旬までに完結するとした当初の予定通りである。 さらに、次年度に行うことを想定していた臨床研究に関する先行実験として、食道癌術後のヒト検体を用いた5-ALAに関連する因子、すなわちHMOX1とGPX4の食道癌患者における発現の臨床的意義の解析をほぼ終了しており、こちらは予定通りか、あるいは予定より進展していると考えている。 総じて、本研究は該当年度においておおむね順調に進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまずマウスを用いた動物実験の詳細な解析を行い、予期しない副次的効果が無いかなどをくまなく検証する。必要に応じてこの結果をin vitro系に持ち込み解析をする。また、複数回の動物実験が必要と判断された場合は、時間的余裕があるためこれを行うことも考慮する。 一方、臨床における5-ALAの効能に関する検討についての予備検討において、食道癌化学療法後の患者で5-ALA関連因子が大きく変動していることが明らかとなった。すなわち、同種の抗癌薬を用いる他癌腫においても術前化学療法の効果で5-ALA関連因子が変動し、これを5-ALA投与によって制御することが可能となると考えられた。依然として本検討に組み込める基準を満たす食道癌患者は少数しかいないため他癌腫患者への対象拡大を検討し、当初の予定通りの研究を行いたい。
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Causes of Carryover |
研究は概ね予定通りに進んでおり、次年度に繰り越す予算が少額発生した。
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