2021 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオミクスを活用した体内循環腫瘍細胞塊のがん転移促進機序の解明と治療応用
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19K16851
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
佐藤 友美 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 プロテオームリサーチプロジェクト, 特任研究員 (10333353)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | がん転移 / プロテオミクス / スフェロイド / 細胞極性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに体内循環がん細胞塊の転移確立を制御する細胞間シグナルを明らかにする実験系として、血管内皮細胞とがん細胞の共培養サンプルでは両細胞の存在比が変化しデータ解析が複雑化することが明らかになったため、がん細胞側のシグナル変化に焦点を絞りリン酸化変動解析による関連シグナルの探索を試みた。 浮遊培養がん細胞塊をコラーゲンコートディッシュへ播種し、継時的に接着細胞塊を回収してプロテオミクス解析を行なった。接着過程でシグナル強度が2倍以上に変動したタンパク質は同定タンパク質5070のうち増加、減少共に約50であり、リン酸化サイトは12786同定サイト中、増加、減少それぞれ約1200サイトであった。 Gene ontology解析から細胞間接着や細胞極性関連タンパク質のリン酸化亢進が予測され、今回の解析結果が極性を持つがん細胞塊の形態変化を伴う転移確立過程に関与するリン酸化シグナルを捉えていると考えられた。リン酸化酵素の活性予測解析から接着過程で細胞増殖に促進的なCDK1/2の活性低下と細胞骨格変化に関与するEPHA2の活性化が予測され、コラーゲンへの接着によりがん細胞が増殖から形態変化、運動モードに転換している可能性が示唆された。リン酸化亢進タンパク質間の相互作用解析では、EGFRとErbB2が多くのリン酸化亢進タンパク質と相互作用していることが予測されたが、よりリン酸化が大きく亢進したIGF1Rも比較的多くのリン酸化亢進タンパク質と相互作用が予測され接着シグナル関連受容体である可能性が示唆されたことを、分子生物学会にて報告した。 これら接着確立関連分子に対する阻害剤を用いて浮遊がん細胞塊に対する接着阻害能と細胞毒性、血管内皮細胞に対する細胞毒性を評価し、がん細胞塊に選択的に毒性を示す接着阻害剤候補を得た。今後免疫不全マウスを用いた実験により転移抑制効果を検証することを予定している。
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