2020 Fiscal Year Annual Research Report
膵臓がん患者に対する金カプシドの光学特性を利用した新規診断・治療法の開発
Project/Area Number |
19K16854
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
黒川 宏美 筑波大学, 藻類バイオマス・エネルギーシステム開発研究センター, 主任研究員 (30791496)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金粒子 / ポルフィリン / 表面プラズモン現象 / がん特異的 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌は本邦の死因の一位であり、未だ根治が困難な疾病である。主な治療法として原発巣を摘出する外科的療法がある。切除困難な領域のがんに対しては化学療法が用いられる。多くの抗がん剤はがん特異性はなく正常組織に副作用を及ぼす。放射線療法に関してはがん組織に集中して照射しがん組織の消失を図るものだが、正常組織への曝露は防ぐことができない。よりがん選択的な治療法が求められている。金は高い生体適合性や、表面修飾法が確立されていることから、多機能なプローブとして研究されている。とくに形態を調製することで吸収波長を変化させることができ、表面プラズモン現象を利用したがん治療法の開発が行われている。しかしながら金自体にはがん特異性はなく、送達に関して工夫が必要である。 申請者はこれまでがん特異的なポルフィリン集積現象を利用した光線力学療法の研究を行ってきた。この研究を通して、金粒子にポルフィリンを修飾することでがん特異性が増加するのではないかと着想した。ポルフィリンの吸収波長は660-680 nmであり、有効性は表在がんに限定される。そこで近赤外領域に吸収のある金粒子と組み合わせることで、深部がんに対する有効性も付与できるのではないかと考えた。 金粒子にポルフィリンを修飾した化合物(Au-HpD)を合成し、機能を評価した。ラット胃粘膜正常細胞RGM1とそのがん様変異株RGK1を用いてAu-HpDの集積を比較したところ、RGK1はRGM1に比べ細胞内での蓄積量が有意に高かった。さらにAu-HpDを取り込ませた細胞に870 nmのレーザー光を照射すると、RGK1特異的な細胞傷害が誘導された。
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