2019 Fiscal Year Research-status Report
乳癌におけるDNA損傷応答機構を標的とした新規治療法の開発
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19K16869
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
茂地 智子 (高居智子) 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (10818090)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | PARP / BRCA1変異陽性乳がん / 相同組み換え修復 / PARP阻害剤耐性 / DNA損傷チェックポイント機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(poly ADP-ribose polymerase: PARP)はDNAの一本鎖切断部位に結合し、nicotinamide adenine dinucleotide(NAD+)を基質として標的タンパクにADP-ribose残基を鎖状に付加重合して翻訳後修飾する酵素であり、DNA修復に関与する。PARPの活性が低下すると、BRCA1/2の機能が欠損した細胞では相同組み換え修復によるDNA修復機構も働かないためゲノム不安定性が生じ、アポトーシスが誘導される。この合成致死の作用機序を利用したPARP阻害剤は、BRCA遺伝子変異を有するがんの分子標的薬として注目されているが、早くもがん細胞がPARP阻害剤耐性を獲得することが報告されている。 一方、BRCA1は相同組み換え修復以外にも細胞生存の維持に多機能を有し、DNA損傷チェックポイント機構のセンサータンパクであるATM(ataxia telangiectasia Mutated)やATR(ataxia telangiectasia and Rad3 related)によりリン酸化され、細胞周期の制御でも重要な役割を果たす。 本研究の目的は、BRCA1変異陽性乳がんにおけるPARP阻害剤耐性獲得とDNA損傷チェックポイント機構の関連性を明らかにし、DNA損傷チェックポイント機構を標的とすることがPARP阻害剤耐性を克服する新規治療戦略となり得るのかを検証することである。また、臨床検体での解析及び臨床情報も加えた検討を行うことで、臨床応用に繋がる知見を得ることも目指している。本年度は、細胞内でのPARP阻害剤耐性獲得の分子生物学的機序の解明のために、BRCA1変異を有するPARP阻害剤耐性乳がん細胞株の樹立を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の実験の進行には、BRCA1変異を有するPARP阻害剤耐性乳がん細胞株の樹立が必須であるが、そのための情報収集や実験環境の整備などに時間を要したことにより、本年度中に樹立に至ることができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
BRCA1変異を有するPARP阻害剤耐性乳がん細胞株の樹立後は、PARP阻害剤耐性獲得下での相同組み換え修復関連タンパク動態やDNA損傷チェックポイントシグナルの活性化状況の解析を計画している。また、PARP阻害剤とDNA損傷チェックポイント阻害剤の併用に対する同細胞株の感受性を解析し、感受性が確認される場合には、相同組み換え効率の測定やDNA二本鎖切断関連因子の解析を加えて、感受性予測因子の同定を試みる予定である。 更に、BRCA1変異陽性乳がんの症例が蓄積されれば、その臨床検体における相同組み換え修復及びDNA損傷チェックポイント関連タンパクの発現の解析及び臨床情報の後方視的解析を行うことにより、BRCA1変異を有するPARP阻害剤耐性乳がんの症例へのDNA損傷チェックポイント阻害剤の臨床的適応についても検討する。
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