2020 Fiscal Year Research-status Report
行動療法が自閉症の社会性障害を改善するメカニズムの解明
Project/Area Number |
19K16902
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
村上 浩子 (古田島浩子) 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主任研究員 (60619592)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 行動療法 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、単一遺伝子疾患の自閉症モデルマウスの中でも、特に自閉症を高い確率で発症する結節性硬化症(TSC)のモデルマウス(Tsc1+/-マウス)を用いて遺伝子の後天的修飾(エピジェネティクス)の機序であるDNAメチル化に着目することで、自閉症における行動療法の影響および効果を検討し、社会性障害の病態解明を目的としている。昨年度までに、ペア飼育による社会性障害への影響の検討とDNAメチル化解析を実施した。12週齢から15週齢まで行動テスト(行動量・不安の評価、痛みに対する応答の評価、筋力の評価、社会性の評価)を実施したところ、 野生型と飼育したTsc1+/-マウスの社会性行動障害が改善することを見出した。また、いずれのペアにおいても、体重や脳重量に有意な差は見られなかった。全ての行動テスト終了後(社会性行動テスト終了後)、マウスの全脳を取り出し、溶解後、DNA抽出を行い、ChIp-on-chip用アレイの Mouse CpG Island Microarray (G4811A)を使用し、ゲノムワイドに全メチル化領域を解析した。3種類の飼育パターン(野生型-野生型、野生型-Tsc1+/-、Tsc1+/--Tsc1+/-)のそれぞれのメチル化を受けた遺伝子の比較・解析を実施した。さらに、7週齢からのペア飼育による影響の検討も進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3週齢からのペア飼育による影響の行動解析が終了し、現在メチル化解析に取り組んでいるので、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
3種類のペア飼育パターン(野生型-野生型、野生型-Tsc1+/-、Tsc1+/--Tsc1+/-)を元に、遺伝子改変(Tsc1ヘテロ)による影響と環境要因(ペア飼育)による影響を区分して解析を進めていく。さらに、3週齢からのペア飼育によるDNAメチル化への影響をデータベースを元にメチル化を受けた遺伝子との比較・解析を進める。これらの比較・解析の進捗に応じて、研究代表者が保有している薬剤(ラパマイシン)投与した野生型、Tsc1+/-マウスおよび胎生期のバルプロ酸曝露による自閉症モデルマウスの遺伝子発現解析のデータと比較・解析を進める。また、昨年度から続けて、7週齢からのペア飼育が社会性行動にどのように影響するかを3週齢からのペア飼育と同様に行動解析(行動量・不安の評価、痛みに対する応答の評価、筋力の評価、社会性の評価)を行う。
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Causes of Carryover |
マウス脳のDNA抽出を行い、anti-5-メチルシトシンで標識を行ったが、その標識をキットを使用せずに実施した。キットの検討は行ったものの、試薬代のみで実験を行ったので、キット代がかからず、次年度使用額が生じた。今後は、行動実験のマウス購入代や論文の英文校閲費、論文化に向けた追加の実験費用に使用する予定である。
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