2019 Fiscal Year Research-status Report
新規ストレス誘導性細胞の機能解析とストレスバイオマーカーの確立
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19K16903
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 勇希 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (50794020)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ストレス / 自己反応性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々は、重力、痛み、電気刺激などの局所神経の活性化が特定血管に炎症を引き起こすことで、免疫細胞の中枢への侵入口を形成するメカニズム「ゲートウェイ反射」を提唱してきた。また近年、T細胞依存性の自己免疫病態を誘導したマウスに過度のストレスを施すことで、脳内の特異血管に病原性T細胞の集積および炎症が生じ、それによって神経回路が異常に活性化され、末梢臓器の機能異常から突然死を引き起こすストレスゲートウェイ反射が誘導されることを明らかにした。具体的には移入された中枢神経系の自己反応性T細胞が海馬、歯状回、第三脳室に囲まれた特異血管に浸潤し微小炎症を引き起こす。その結果、新たな神経回路が形成されることで胃・十二指腸からの出血および心不全が生じた。このことは、特定の免疫細胞の挙動とストレスによる臓器障害の機能的繋がりを示している。しかしながら、脳内に侵入してくる病原性T細胞がどのような特徴を持っているかは未だ不明である。言い換えれば、この細胞の特異的マーカーを同定することで、ストレスに起因する臓器障害の早期診断につながるバイオマーカーや治療標的となりうる。また予備実験により、ストレス下で飼育したマウスの末梢血および脾臓ではこれまでに報告のない特定の表面マーカーを有する免疫細胞群が増えることが分かった。そこで本申請では脳内病原性T細胞やストレスによって変動する免疫細胞集団の特徴的なマーカーをまずマウスにおいて探索し、そのなかでヒトにも存在する分子を選別し、ストレス性臓器障害の新規バイオマーカー及び治療標的を同定することを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通常MOG反応性T細胞を移入したマウスを慢性ストレス下で飼育すると、脳内の特異血管にて微小炎症が生じ、新たな神経回路が形成される。この神経過剰活性化が胃・十二指腸からの出血および心不全を引き起こし突然死を誘導する。しかしながら、胃薬 (プロトンポンプ阻害薬)を投与すると突然死が抑制することも明らかになっているため、胃薬を投与したマウスにて長期に渡りストレスをかけることでストレスにより増加する細胞集団を同定しやすいのではないかと考えた。慢性ストレス下にてプロトンポンプ阻害薬を投与し、1ヶ月経過したのち臓器を採取した。その結果、通常ケージにてプロトンポンプ阻害薬を投与したコントロール群と比較して著明な脾腫がが認められた。さらに脾細胞様々な表面マーカーを染めわけフローサイトメトリーを行なったところ、linage negativeの細胞集団が長期のストレス下で飼育したマウスで特異的に増加することが明らかとなった。そこで次に、当該マウスにて増加してきた集団をソーティングにより採取、RNAシークエンスを行なった。その結果、表面マーカーAおよび受容体Aが長期ストレス群にて高発現することが明らかとなり、フローサイトメトリーによる解析でも再現性を認めた。また非常に興味深いことに、当該ストレス誘導性細胞集団は脾臓のみならず末梢血でも検出でき、また急性のストレスでも検出されることが明らかとなった。これらのことから将来的にストレスの診断や治療標的になることが考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
1) アンタゴニスト投与または当該免疫細胞移入による表現型解析 :受容体Aを発現する細胞集団がストレスによる病態を正または負に制御する機能を有するか検討するために受容体AのアンタゴニストをEAEマウスにストレスを負荷したマウスに投与し、突然死に与える影響を解析する。また、この免疫細胞をソーティングにて単離・移入を行い、同定した細胞集団が突然死に与える影響を解析する。さらに、オープンフィールドテスト・高架式十字迷路・明暗箱テストなどの行動試験も行い不安、鬱様症状、学習・記憶なども評価する。2) ストレス誘導性障害に対する作用メカニズム解析:免疫染色あるいは透明化技術 (CUBIC)を用いてこの細胞を移入したマウスの脳における神経活性化を評価する。特にCUBICに関しては中枢神経系の活性化部位蛍光を発する遺伝子改変マウスであるArc-dVenusマウスの脳を透明化し、イメージング解析を行う。また、神経トレーサーを用いてどのような神経回路が形成されているかも検討する。さらにマウスの血清およびストレス誘導性免疫細胞の培養上清を用いてメタボローム解析を行い、代謝産物の変動を網羅的に解析する。また、脳内病原性T細胞とストレス誘導性免疫細胞の機能的関連についても検討を行う。3) ヒト末梢血におけるバイオマーカー候補の検出: 健常者およびストレスチェックの結果、高ストレス者と判断された人の末梢血を用いてバイオマーカー候補の発現レベルおよび発現細胞の解析を行う。ヒトから末梢血を採取し、マウスで見つかったバイオマーカー候補を発現するCD4 T細胞やストレス誘導性免疫細胞をフローサイトメトリーで検出する。末梢血を採取する対象となる人には心理学的なストレスチェックを行い、その結果と上記細胞群の数などに相関があるかなども検討する。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Orosomucoid 1 is involved in the development of chronic allograft rejection after kidney transplantation.2020
Author(s)
Haruka Higuchi , Daisuke Kamimura , Jing-Jing Jiang , Toru Atsumi , Daiki Iwami , Kiyohiko Hotta , Hiroshi Harada , Yusuke Takada , Hiromi Kanno-Okada , Kanako C Hatanaka, Yuki Tanaka , Nobuo Shinohara , Masaaki Murakami
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Journal Title
Int Immunol .
Volume: 32
Pages: 335-346
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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