2019 Fiscal Year Research-status Report
抗heat shock protein抗体による血液脳関門破綻の病態解明と応用
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19K16917
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
前田 敏彦 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (50738961)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / ストレス蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は神経免疫疾患の発症や再発,病勢をモニターすることのできる新たな分子マーカーを探索することである.研究手法として,血液脳関門を構成する脳血管内皮細胞をターゲットとする新たな自己抗体を探索し,その臨床的意義を明らかにすることにより,新たな自己抗体の分子マーカーとしての有用性について検証を行う. 本年度は視神経脊髄炎患者のプール血清と培養脳血管内皮細胞由来の膜蛋白質を用いた免疫沈降・質量分析法によって、脳血管内皮細胞表面の抗原を標的とする自己抗体の単離・同定と機能解析を行った.30kDaから110kDaの範囲に複数の分子量の免疫沈降産物が得られ,そのうちストレス蛋白質に関連する分子が含まれていた.視神経脊髄炎でみられる血液脳関門の破綻メカニズムに、同定された分子に対する自己抗体を介した機序が関与するかについて検証するため,セルカルチャーインサートに脳血管内皮細胞株を単層培養して作成した、ヒト血液脳関門モデルを用いて実験的検討を行った.視神経脊髄炎のプール血清から精製した免疫グロブリンGと,免疫沈降・質量分析によって同定された分子の全長組み換え蛋白質を用いて吸収した免疫グロブリンGのそれぞれをヒト血液脳関門モデルに作用させ,バリア機能を比較検討した.あるストレス蛋白質の組み換え蛋白質で吸収後の免疫グロブリンGは,精製免疫グロブリンGに比べ,有意にバリア機能を改善させることが明らかになり,血液脳関門の破綻に関与する機能を持った新たな自己抗体の存在が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の達成目標として,脳血管内皮細胞表面の抗原を標的とする新たな自己抗体を,免疫沈降法を用いて探索・同定し,培養細胞を用いた機能解析を行うことを想定していたが,ほぼ達成することができた.機能解析の結果の再現性について,検体数をさらに増やして検討を行う必要があるが,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
視神経脊髄炎患者および健常対照や疾患対照から採取・保存した血清中の新たな自己抗体の抗体価を,ELISA法や免疫ブロット法を用いて測定し、抗体価と重症度などの臨床像との関連性を明らかにすることで,自己抗体の分子マーカーとしての意義について検討を行う予定である.
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Causes of Carryover |
物品費について,本年度行った免疫沈降法および免疫グロブリンGの精製と機能解析の一部を,令和2年度に変更したため,試薬等の購入費について未使用額が生じた.この未使用額については,令和2年度の分子同定および機能解析に用いる試薬等の購入費と合わせて使用する.
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