2019 Fiscal Year Research-status Report
ミクログリア機能異常と神経発達障害の発症機構の解明
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19K16918
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中嶋 秀行 九州大学, 医学研究院, 特任助教 (00835390)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | RTT / MeCP2 / TLR9 / microglia |
Outline of Annual Research Achievements |
MeCP2遺伝子変異は、Rett症候群(RTT)をはじめ、自閉症、統合失調症などを含めた様々な精神疾患・発達障害への関与が知られているが、その発症機序の詳細は不明である。これまで、MeCP2変異によるニューロンの機能異常がRTT発症の原因と考えられてきたが、最近グリア細胞の機能異常がRTT病態発症の一因である可能性が示唆され始めている。申請者はこれまでに、脳内免疫担当細胞ミクログリアに高発現し、細菌・ウイルス由来DNAを認識するToll様受容体9(TLR9)の遺伝子欠損マウスとMeCP2遺伝子欠損マウスを交配させ得られたTLR9/MeCP2ダブル欠損マウスでは、MeCP2単独欠損マウスと比べ寿命が著しく伸びることを発見した。そこで本研究では、遺伝子欠損マウスの表現型の回復評価、ミクログリア機能性分子の探索・同定を行うことで、TLR9シグナルの異常がRTT病態発症の一因であること及びそのメカニズムを明らかにすることを目的とした。 MeCP2欠損マウス脳では野生型と比較しミクログリアが異常に活性化していることが報告されている。そこで、TLR9/MeCP2ダブル欠損マウス脳においてミクログリアの異常な活性化が減少しているかどうかを検討した。その結果、MeCP2欠損マウス脳と比較しTLR9/MeCP2ダブル欠損マウス脳ではミクログリアの異常な活性化が抑制されていることが明らかとなった。また、MeCP2欠損ニューロンで見られるシナプスの形成異常がTLR9/MeCP2ダブル欠損ニューロンで改善していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していたTLR9/MeCP2ダブル欠損マウス脳の組織学的評価を行うことができた。TLR9/MeCP2ダブル欠損マウス脳ではMeCP2欠損マウス脳でみられる異常なミクログリアの活性化やシナプス形成異常が改善していることを明らかにできたため、当研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、TLR9/MeCP2ダブル欠損マウスの行動解析を行う。MeCP2欠損マウスで異常がみられているオープンフィールドテスト(活動量・情動性を測定)や恐怖条件付けテスト(文脈記憶・注意能力を測定)などを行い評価する。また、ミクログリア機能性分子の同定を行う。野生型、MeCP2欠損マウス及びTLR9/MeCP2ダブル欠損マウスとIba1-GFPマウスとの交配を行う。この交配により得られたマウスから脳を単離し、GFPの蛍光を指標に蛍光細胞分取装置により各遺伝子欠損ミクログリアを単離する。その後、RNAを抽出しライブラリーを作成後、RNA-シーケンスを行い遺伝子の発現変動をゲノムワイドに解析する。野生型と比較し、MeCP2欠損ミクログリアで発現が変化しており、かつTLR9/MeCP2ダブル欠損ミクログリアで発現が正常に戻っている遺伝子をミクログリア機能性候補分子として同定する。
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Causes of Carryover |
MeCP2欠損マウスとTLR9欠損マウスとの交配がうまくいき、短期間で多数の遺伝子欠損マウスを得ることができた。そのためマウスの維持・購入費が想定していたよりもかからなかったため。
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