2021 Fiscal Year Research-status Report
集中治療患者の上腸間膜動脈の血流に対する鍼灸治療の効果の検討
Project/Area Number |
19K16947
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
松本 淳 岐阜大学, 附属病院第二内科, 技術補佐員 (90467209)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 鍼治療 / 集中治療 / 腹部内臓血流 / 上腸間膜動脈 / 超音波カラードップラー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は集中治療中の重症患者における鍼治療による上腸間膜動脈を指標とした腹部内臓血流の変化の検討を行い、重症患者の腹部症状に対する鍼治療の効果の機序の一端を解明することにある。 令和3年の取り組みとして、本邦では集中治療領域の鍼治療に関する報告自体が少ないため、これまでに集中治療領域の鍼治療や指圧等の鍼関連の経穴刺激療法に関して国内外でどのような検討が行われてきたかについて系統的な文献調査を行った。Pubmedを用いて、病院の集中治療室で鍼灸治療または経穴刺激が行われた英語論文を収集した。新生児や小児ICUの報告、学会抄録やプロトコル論文は除外した。その結果、21件の文献が検索された。介入の内訳は鍼または鍼通電12件、指圧または経穴圧迫6件、経穴経皮的電気刺激3件であった。治療対象は、胃排出能や栄養改善3件、敗血症時の消化管障害など敗血症関連5件、急性消化管障害1件、術後嘔気嘔吐1件、睡眠関連2件、鎮静関連2件、痛み関連2件、人工呼吸下の呼吸安定3件、せん妄予防1件であった。このうち、消化管に関連するものが10件であった。無作為化比較試験は13件であった。これらの報告は実行可能性を調査したパイロット研究を除き、すべて鍼治療または経穴刺激の有用性を示唆するものであった。集中治療領域の様々な症状に対して、鍼治療や鍼関連の経穴刺激療法の有用性を示唆する報告がみられた。特に消化管に関連するものが約半数と多くみられたことから、消化管に関連の深い上腸間膜動脈の血流の鍼治療による変化を調査する本研究を行うことは、集中治療患者の消化管関連症状に対する鍼治療の効果の機序を検討する上で意義があると考えられた。 また、令和3年から大学病院集中治療室入院患者の上腸間膜動脈の血流変化に対する鍼治療の効果を超音波測定により評価する観察研究を開始し、現在も継続中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和3年に集中治療室入院中の患者の鍼治療中の上腸間膜動脈の血流を測定する観察研究の倫理審査を終え、患者の組み入れを開始した。しかし、コロナ禍による大学病院集中治療室の入院状況の変化や面会制限のため患者家族の同意を取得する機会の設定が困難であったことや、新たに超音波測定を委託した検査技師の異動、不整脈などにより研究対象の基準に合致しなかったこと、当該部位の血流の超音波カラードップラー法による描出が困難な症例があったことなどの理由より、データー収集の遅れが生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、異動となった検査担当技師にかわり新たな検査技師に超音波測定を委託するなど体制を整え、集中治療患者の鍼治療中の上腸間膜動脈の血行動態の変化に関する観察研究の患者の組み入れを進めている。同研究では、大学病院の集中治療室入室中に鍼治療を受ける患者の鍼治療前後の上腸間膜動脈の血行動態の変化を観察することで鍼治療の短期効果を検討する。上腸間膜動脈の血行動態の観察は腹部超音波カラードップラー法により行い、血流量、抵抗指数、拍動指数, 収縮期最大速度、拡張末期血流速度を算出する。同時に、脈拍、動脈血酸素飽和度、血圧、心拍変動係数の変化も観察する。APACHEスコアによる集中治療患者の重症度と鍼治療による上腸間膜動脈の血行動態の変化の関連の検討を行う。心拍変動により評価される自律神経系の変化と鍼治療による上腸間膜動脈の血行動態の変化の関連の検討を行う。
|
Causes of Carryover |
研究の進捗に遅れが生じているため、研究協力者への謝金の支払いや論文作成に伴う費用(英文校正費等)の支払いに至っていない。また、コロナ禍による関連学会発表における現地参加の取りやめなどにより出張費の使用に至っていない。次年度には、謝金の支払いや関連学会発表や論文作成に伴う費用の支払いを予定している。
|
Research Products
(1 results)