2020 Fiscal Year Research-status Report
インスリン抵抗性及び分泌低下に対するマクロファージ増殖の病態生理学的意義の検討
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19K16982
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
前田 沙梨恵 熊本大学, 病院, 特任助教 (30836234)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マクロファージ増殖 / インスリン抵抗性 / インスリン分泌能 / 糖新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満・糖尿病モデルマウスの内臓脂肪・肝臓におけるマクロファージの増殖がインスリン抵抗性の形成に及ぼす影響については未だ検討されていない。そこでスカベンジャー受容体のプロモーター/エンハンサー(pAL)制御下にp27kipを発現するマクロファージ特異的増殖抑制マウス(mac-p27Tg)を作製し、インスリン抵抗性に対してマクロファージ増殖が与える影響について、以下の通り証明した。 まずWTマウスに高脂肪食(HFD)を負荷することで、内臓脂肪及び肝臓のマクロファージが有意に増殖することを証明した。続いて対照群(HFD-WT)に比しHFD負荷mac-p27Tgマウス(HFD-Tg)では、全身の糖利用率及び骨格筋の糖取り込み率が改善し肝からの糖産生率が減少することを、グルコースクランプ法を用いて証明した。またインスリン注射にて、HFD-WTの肝臓・内臓脂肪におけるAktリン酸化が誘導されたが、HFD-TgではAktリン酸化がより有意に亢進しており、HFD-Tgの肝臓・内臓脂肪におけるインスリン感受性の改善が確認できた。 HFD-Tgマウスの内臓脂肪及び肝臓では、マクロファージの増殖抑制やM1/M2比の減少が観察され、炎症や酸化ストレスの軽減を認めた。さらに肝臓の脂肪蓄積及び線維化の抑制、血清中の遊離脂肪酸の濃度減少も確認された。 以上より、インスリン標的臓器である内臓脂肪・肝臓における局所のマクロファージ増殖がインスリン抵抗性形成に関与することを明らかにした。 一方、インスリン分泌能に対する膵島マクロファージ増殖の関与についても検討中である。これまでHFD-Tg及び対照群におけるブドウ糖負荷試験時の血清インスリン値を比較したが、両者に有意差は認めなかった。今後さらなる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マクロファージ増殖とインスリン抵抗性の関連については、当初の予定通りに研究を進められた。一方、マクロファージ増殖とインスリン分泌能の研究については、db/dbマウスとmac-p27Tgマウスの交配に苦戦しており、未だ必要個体数が確保できておらず、施行できていない研究が多い。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロファージ増殖抑制によるインスリン分泌能への影響を評価するために以下の①-④を検討する。 ① 肥満・糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスの膵島におけるマクロファージの増殖を定量的に解析する。さらにM1(炎症性)、M2(抗炎症性)マクロファージを分類し、其々の増殖を評価する。② db/dbマウスとマクロファージ抑制マウス(p27Tg)を交配したマウス(db/db×Tg)より膵島を単離し、グルコースで刺激した際のインスリン分泌量を測定する。③ db/dbマウスをコントロールとして、db/db×Tgマウスにおけるβ細胞の容量及び増殖、アポトーシスを免疫染色及びフローサイトメトリーを用いて評価する。またこれを10、15、20週齢で行い、経時的変化も観察する。④ 10週齢以降のdb/db及びdb/db×Tgマウスをドナー及びレシピエントとして骨髄移植を行うことで、β細胞容量が骨髄マクロファージ増殖に依存するか検討する。骨髄マクロファージ増殖を途中から抑制させた場合の、β細胞容量減少へ与える影響を評価することで、既にβ細胞障害を来した時点でのマクロファージ増殖抑制を行う治療的意義を検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が発生したが、少額であり使用計画に大きな変更はない。次年度の実験のための費用として使用する計画である。
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Research Products
(4 results)