2019 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of cortical motor neuron excitability measurement system in amyotrophic lateral sclerosis and therapeutic drug development
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19K17000
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鈴木 陽一 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (80818485)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / 運動皮質過剰興奮 / 閾値追跡法2連発経頭蓋磁気刺激検査 / MRスペクトロスコピー / PET |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)における運動神経細胞死の原因の一つとしてグルタミン酸化過剰興奮説が提唱されている。これはグルタミン酸が過剰になると、AMPA受容体へのCa2+の過剰流入が起こり、ミトコンドリア機能異常や、フリーラジカルの増加などの環境変化が起こり、神経細胞死につながるとするものであり、運動神経の過剰興奮やその背景にある神経伝達機能異常は診断および治療上の重要な標的と考えられている。近年、運動皮質の興奮性を評価する方法として、閾値追跡法2連発経頭蓋磁気刺激検査(TT-TMS)によりグルタミン酸およびGABAが関与する神経伝達機能が類推可能とされている。脳内神経伝達機能の評価方法としては、陽電子放射断層撮像(PET)検査を用いたグルタミン酸受容体5の機能評価や、MRスペクトロスコピー(MRS)によるグルタミン酸およびGABAの機能評価が可能となってきた。これらの検査を用いてALSにおける神経伝達機能異常の有無と運動神経過剰興奮性、TT-TMSならび機能画像で得られた所見とALS患者の臨床症状、グルタミン酸系ならびにGABA系の神経伝達機能を修飾する薬剤投与前後における、運動神経興奮性ならびに神経伝達機能の変化と臨床症状の変化との関連を明らかにする。 健常対象による正常値の構築、ALS治療薬であるリルゾールを内服する前と内服後4週間での運動皮質の興奮性や臨床症状の評価を行うことで病態の主座を明らかにし、治療薬探索への臨床応用への展開を目指していくことを計画している。 現在、正常対象におけるTT-TMSの健常コントロール群を作成し、豪州からの既報告と比較して健常者間での人種差に大差がないことを確認し、ALS患者群においてもリクルートを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
放射線医学総合研究所における倫理委員会の承認を得る為に時間を要したため、ALS患者のリクルートが2019年12月に開始となった。また、承認後1カ月の間はすぐに検査の適応となりうるALS患者が来院されなかったことや一旦同意を得たALS患者の都合がつかなくなり、PET検査とMRS検査を行えないといった問題が生じたため遅れている。その後は同意を得られた患者が続いており、今後徐々に遅れを取り戻していくものと思われる。また、放射線医学総合研究所での倫理申請中は閾値追跡法2連発経頭蓋刺激検査の日本人における正常コントロールをリクルートし、20人以上の正常コントロール群が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、数名のALS患者のリクルートに成功している。一方で、本研究は検査の適応となるALS患者や放射線医学総合研究所における1カ月当たりの検査枠は限られている。特にALS患者のADLや自宅の立地条件、介護者の協力状況に左右されると考えられる。当院で診断されるALS患者と診断された人数はここ数年、50名から60名前後と大きな変化はないため、研究参加に協力を得られそうなADLや当施設に比較的近い患者のリクルートを行っていく。ALS患者の母数を増やすことで研究に組み入れる人数が増える可能性がより高くなると考えられるため、県内の関連施設へ研究内容を情報共有することで当院への紹介を頂き、ALS患者の症例数を確保していく。 また、律速段階を作らない、放射線医学総合研究所での検査枠を有効に利用することが必要である。上述の通り、放射線医学総合研究所の1カ月当たりの検査枠が限られているため、早期に検査枠の確保を行い、次月に検査を持ち越さないようにすることも重要であり、緊密に連絡を取ることが必要と考えられる。候補となりうるALS患者が来院された際には事前に放射線医学総合研究所へ連絡を取り、検査枠の確認を行うことで、滞りなく組み入れを行っていくことが研究の円滑な遂行に必要と考えられる。
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Causes of Carryover |
放射線医学総合研究所の倫理委員会で承認を得る為に時間を要したため、ALS患者を対象とした研究を開始するのが遅れてしまった。その影響でALS患者の組み入れ時期が遅れたことから本年度に検査を行った症例数が少なかった。本来使用するはずだったコイル、電極、ペーストなどは従来使用していたものを使用することで今年度に予定していた購入費用を使用する必要がなくなった。 一方で、日本人の健常群をリクルートし、学会発表を行ったため、学会費用などに助成金を使用した。今年度予定していたグルタミン酸受容体5のPET画像やMRスペクトロスコピーの解析は滞っているため、データ解析のための統計ソフト購入なども次年度に行うこととした。閾値追跡法2連発経頭蓋磁気刺激検査を行うコイルや電極、ペーストなどは消耗品であり、ALS患者の症例数が増えることで再購入が必要となる可能性が高い。 また、十分な症例が集まり次第、論文作成および学会発表を行うため、論文の英文校正や投稿費用に使用していく。計画の第一段階であるALS患者におけるGABAやグルタミン酸の機能評価が終了し、第二段階である治療薬の選択、購入に充てていく。
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