2020 Fiscal Year Research-status Report
Research for a new pathogenesis of lysosomal disease in Parkinson's disease onset mechanism
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19K17019
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
王子 悠 順天堂大学, 医学部, 助教 (60777845)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リゾリン脂質 / カルニチン / 長鎖脂肪酸 / α-シヌクレイン / 不溶性画分 / リソソーム蛋白 / シナプス蛋白 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は家族性パーキンソン病(PD)の新規原因遺伝子プロサポシン(PSAP)遺伝子を同定した。本課題では、PSAP遺伝子変異PD患者由来iPS細胞やPSAP遺伝子変異導入マウスを用いて、細胞内脂質組成の変化に着目した解析を行い、PDの病態解明や治療ターゲットの鍵となる脂質組成を探索することを目的とする。PSAPサポシンD領域の遺伝子変異(p.C412Y変異)を導入したisogenic iPS細胞(ホモ接合体・ヘテロ接合体)を作製し実験に用いた。野生型、ホモ接合体変異、ヘテロ接合体変異isogenic iPS細胞をそれぞれドパミン神経細胞に分化させ、高深度なノンバイアス(ノンターゲット)スクリーニングによる高網羅的な脂質代謝物の同定・相対定量解析脂質の網羅的解析を行った。その結果、野生型に比べ、ヘテロ接合体変異ではリゾフォスファチジルセリンなど複数のリゾリン脂質が増加していた。他にも、ヘテロ接合体変異細胞では、脂肪酸やスフィンゴシンの増加がみられた。カルニチンはホモ接合体変異・ヘテロ接合体変異のいずれにおいても低下傾向を示した。先行研究では、早期PD患者において血中の長鎖アシルカルニチンが低下することが報告されており(Saiki, et al. Sci Rep 2017)、本課題の実験結果はPD関連遺伝子変異導入iPS細胞に由来するドパミン神経においても血中と同様の脂質変化を来した可能性がある。他に、これらの細胞系を用いてプロテオーム解析とトランスクリプトーム解析を行っており、PD剖検脳で見られるレビー小体の主要構成蛋白であるα-シヌクレインのトリトン-X不溶性画分への局在および凝集傾向、種々のリソソーム蛋白やシナプス蛋白の低下を見出しており、PSAP遺伝子変異isogenic iPS細胞はPD病態をよく再現している細胞であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PSAP遺伝子変異導入isogenic iPS細胞は、変異を導入した遺伝子以外は均一であり、PSAP遺伝子変異によるドパミン神経細胞の変化を解析するには非常に良いモデルである。今回明らかとなったカルニチン、スフィンゴシン、リゾリン脂質など脂質の変化、そしてリソソーム蛋白やシナプス蛋白の変化はいずれもPD病態にとって重要な変化であり、これらの関係を明らかにすることでPD病態における新たな病態パスウェイを明らかにできる可能性が高いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の解析で得られた一連の結果について、追加解析を行い再現を取ることを今後まず行う。結果を確認できた種々の変化について、例えば脂質変化とα-シヌクレイン凝集との関与、リソソーム異常とシナプス機能不全など、複数の病的変化における相互関与を明らかにすることが重要であり、PDの創薬ターゲットとなり得る新たな病態パスウェイを明らかにすることを目的とし解析を進める予定である。具体的には、トランスクリプトーム解析結果で変化が明らかとなった、オートファジー調節作用やlysosomal biogenesisに関与する機能を持つPKCαに注目し、PKCαに作用する薬剤が治療候補薬となる仮説を検証してゆく予定である。
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Research Products
(3 results)