2019 Fiscal Year Research-status Report
脳梗塞後慢性期における新規治療としてのグリア細胞由来エクソソームの検討
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19K17020
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
平 健一郎 順天堂大学, 医学部, 助教 (60821725)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 軸索再生 / エクソソーム / Semaphorin3A / Semaphorin3A阻害薬 / アストロサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
Semaphorin3A(Sema3A)は神経細胞-グリア細胞のinteractionsに関わり、Sema3A阻害薬は脳梗塞後慢性期における軸索再生の新規治療戦略になり得る。これまで、その機序にSema3A阻害薬がアストロサイトから分泌されるエクソソームを介して軸索を再生させる新たなメカニズムを発見している。本年度はアストロサイトから分泌されるエクソソーム中のmicroRNA解析を行い、軸索再生促進作用を有するmicroRNAを同定し分子病態機構の解明をはかることを目的とした。Sema3A阻害薬を処理した初代培養アストロサイト由来のエクソソーム中では2種類のmicroRNAの発現が有意に減少していた。しかし、これらmicroRNAのパスウェイ解析では、軸索再生に関与する新規パスウェイは認められなかった。そこでそれぞれのinhibitorを処理した初代培養アストロサイトにおいて、軸索再生の障壁となる活性型マーカーであるGFAPを確認したが有意差は認められなかった。各アストロサイトから分泌されたエクソソームの個数、タンパク量共に有意差は認めなかった。次に妊娠17週の胎児ラット脳から抽出した前頭葉皮質神経細胞を、Microfluidic chamberを用いて、神経細胞から軸索を単離させた。Oxygen-glucose deprivation(OGD)後の初代培養神経細胞に各エクソソームを投与し、タイムラプスにて軸索伸展を解析した結果、明らかな有意差は認めなかった。軸索マーカーであるpNFHにも有意差は認めなかった。これらの結果より、microRNAをノックダウンさせることで軸索再生においてSema3A阻害薬と同様の効果を得ることはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は初代培養アストロサイトをOGD後にSema3A阻害薬投与、非投与の2群において抽出したエクソソームのmicroRNAの発現を網羅的に解析すること、Ingenuity Pathway Analysis(IPA)を用いて、microRNAが関わる分子病態機構を解明することが目的であった。Sema3A阻害薬投与群におけるエクソソームの網羅的解析では2種類のmicroRNAが有意に減少していたがIPA解析を行った結果軸索再生に関与する新規パスウェイは認められなかった。そこで次年度に予定していた、microRNAをノックダウンさせたアストロサイト由来のエクソソームをMicrofluidic chamberを用いて初代培養神経細胞に投与し、軸索伸展を検討した。またmicroRNAをノックダウンさせることでアストロサイト自体の変化を検討した。しかし、各microRNAをノックダウンさせたアストロサイトから分泌されたエクソソームを投与した群では明らかな軸索伸展効果は認められなかった。またアストロサイト内GFAPに有意差は認められなかった。microRNAのノックダウンは軸索再生と直接的な関連性がない可能性があるがエクソソームには軸索再生作用を有することを確認しているため、動物実験において脳梗塞モデルラットから抽出したエクソソームを別の脳梗塞モデルラットに投与することで軸索再生とアストロサイトとの関連性を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
脳梗塞後において種々の細胞由来のエクソソームが神経徴候、運動機能を改善する報告が散見されている。脳梗塞モデルラットの血清から抽出したエクソソームを用い、脳梗塞慢性期モデルラットに経静脈的にエクソソームを投与することでperi-infarct areaでのアストロサイトやOPCs、ミクログリアの局在やアストロサイトの形態学的変化、神経徴候、運動機能を検討する。さらに初代培養神経細胞に脳梗塞モデルラットの血清から抽出したエエクソソームを投与することで軸索伸展を評価する。microRNAをノックダウンすることで軸索再生効果が認められなかったが、Sema3A阻害薬を用いることでperi-infarct areaにてGFAP陽性アストロサイトは減少し、アストロサイト由来エクソソーム中の特定のmicroRNAが減少していることは明らかであるため、まず経静脈的にエクソソームを投与した脳梗塞慢性期モデルラットのperi-infarct areaでのSema3A陽性細胞の変化を検討する。さらに脳梗塞モデルラットの血清から抽出したエクソソームのmicroRNAを網羅的に解析しさらにパスウェイ解析することで、既知のmicroRNAとの関連性の検討を行う。これらにより、これまで特定されたmicroRNAをノックダウンさせることで得られなかった軸索再生効果の原因検索を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は想定した実験結果に結びつかなかったため、研究方針の再検討を要した。そのため、当初購入予定であった各種抗体や培養液、動物等の購入ができなかった。また研究成果が出なかったことにより学会参加や発表ができなかった。それに加え、新型コロナウイルス感染症での緊急事態宣言が発令されたことにより、実験室の使用規制がかかったため、進行中の培養実験や動物実験を強制的に終了せざるを得なかった。そのため細胞培養に必要な培養液、エクソソーム抽出に必要な物品の購入、動物実験に必要な動物、餌などの購入ができなかったことが理由としてあげられる。
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