2019 Fiscal Year Research-status Report
重症筋無力症における補体の網羅的解析と補体標的治療
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19K17026
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小澤 由希子 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (50792412)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 重症筋無力症 / 補体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではアセチルコリン受容体(acetylcholine receptor: AChR)抗体陽性重症筋無力症(MG;Myasthenia Gravis)の治療前の血清補体価ならびに経時的な血清補体価に注目し、臨床経過や治療の効果と検証することで、治療介入初期から効果的な治療選択ができないか検討することを目的としている。 2019年度は、AChR抗体陽性全身型MG44例の免疫治療開始前のヒト血清と、疾患コントロールとして性別と年齢の調整を行った非免疫疾患患者20例のヒト血清の計64検体の補体(C3, C4, sC5b-9)と補体制御因子(Properdin, Clusterin, Vitronectin)を測定した。また同一個体での推移をみるため経時的な補体・補体調整因子の測定をうち8例で行った。 コントロールと比較してMG群ではsC5b-9とVitronectinは高値であり、ProperdinはMG群で低値の傾向があった。C3とVitronectinは1年後のMGADLスコアと正の相関傾向を認め、C3とVitronectinは治療後に低下していた。今回C3・C4値はコントロール群と有意差を認めなかったが、既報でもC3・C4は血清中の総量が多いため神経筋接合部での局所反応を反映しにくいという報告がある。VitronectinはMG群で高く、sC5b9の上昇と同様にMG病態における細胞侵襲複合体の形成亢進を反映しているものと考えられた。副経路でC5分解を促進するProperdinは古典経路の活性の代償として下がっている可能性があり、重症度と相関していたことから病勢の客観的な指標になりうる。全身型重症筋無力症において補体、補体調整因子は病態と関与しており、バイオマーカーとなる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全身型AChR抗体陽性MG患者の免疫治療前の保存血清と疾患コントロールとして年齢調整を行った非免疫疾患患者の保存血清で補体(C3,C4,sC5b-9)と補体調整因子(Properdin、Clusterin、Vitronectin)を測定した。免疫治療開始時からの治療歴、臨床症状の評価としてMGADLスコア、AChR抗体価、クリーゼの有無、MGの治療目標である「プレドニゾロン5mg/日以下で仕事・生活に支障のない機能レベル」に達するまでの期間などを診療録から後方視的に収集した。現在、統計学的処理を行い、補体価と臨床経過の関連を検証しているところであり論文化を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに行った研究成果の論文化ならびに、国内・海外での学会報告を目指している。 測定検体数を増やして大規模に検討するだけではなく、検証する補体や補体調整因子を増やして再度実験すること、数を増やして長期的に経時的な補体・補体調整因子を測定することで、さらにMGの病態解明への貢献を検討している。
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Causes of Carryover |
当初使用を検討していた補体測定キットを変更したことと、予定していたよりも少ない検体数で2019年度は測定をおこなったため、直接経費内容が変更となった。キットを変更することで予定していた補体だけではなく、補体制御因子の測定も可能となった。また設備備品費として自動プレート洗浄機を申請したが補体キットの変更により手順が簡略化され2019年度は自動プレートは1台で処理することができ、自動プレート洗浄機は購入を見送った。 2020年度は測定検体数や測定する補体・補体制御因子を増やして、さらにMGの病態における補体の役割を検証する予定である。また研究内容の成果についても国内・国際学会で報告する予定である。
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