2019 Fiscal Year Research-status Report
包括的機能マッピングによる漢字・仮名読みの脳内神経基盤の解明
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19K17033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下竹 昭寛 京都大学, 医学研究科, 助教 (80726000)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 漢字 / かな / 皮質脳波 / デコーディング / 皮質皮質間誘発電位 / 神経心理 / 機能代償 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、漢字・仮名の「読み」の機能に着目し、関連する脳内機能領野の対応の解明のため研究を推進した。術前評価に硬膜下電極を慢性留置した難治てんかん外科患者で研究に同意を得た者を対象とした。漢字/仮名読み課題に同期した皮質刺激介入を症例を追加して計5例で検討し、定量的な精神物理学的評価から、側頭葉底部前後方向に意味から形態認知への機能勾配を明らかにした(論文準備中)。漢字読みに関連して類義語判断課題による言語機能マッピングが側頭葉底部において有用であることを示し(日本神経学会、神経科学大会発表)、同部位がモダリティによらない意味処理機能を有することを示した(国際学会発表)。また、皮質事象関連電位による言語関連の脳機能マッピング法の有用性について提唱した(日本てんかん学会)。運動関連の皮質脳波の脳律動解析の手法を考案し(論文発表)、脳機能マッピングに応用できる皮質電気刺激に替わる低侵襲的脳機能マッピング法を確立した。関連する領野間の脳機能結合地図の作成のため、電気的白質線維追跡法(皮質皮質間誘発電位 CCEP)によるネットワークマッピングの症例を蓄積した。漢字・仮名読みを含む言語ネットワークにおいて前頭葉・側頭葉の機能結合様式を明らかにした(論文発表)。11例の難治側頭葉てんかん患者において、側頭葉前方領域の切除前・後 1週間、1か月、6か月、1年と経時的な漢字・仮名読みを含む神経心理課題を行い、正答率およびエラー内容の検討し、特に漢字の読みが側頭葉前方領域の意味記憶に基づくことを明らかにし、現在論文準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の研究3項目A-Cを目的にかかげ研究を推進した。 A. 漢字・仮名の読みの脳内領野の必須機能部位同定:硬膜下電極留置の患者において、SALA失語症検査をもとに作成した漢字・仮名の読み課題下の高頻度皮質電気刺激介入による言語優位半球側頭葉の底部の前後方向の機能勾配について論文準備中である。また特に漢字読みに関連する類義語判断課題による脳機能マッピングの有用性について国内学会にて発表を行った。電極留置中のビデオ記録から日常内での読み動作時脳波律動を用いる自然行動解析に着手した。 B. 関連領野間の機能的結合地図作成:日本語の読みに関連する皮質間の機能的結合の結合地図作成を推進し、症例を蓄積している。言語優位側前頭葉と側頭葉の機能的結合について論文発表した。 C. 日本語読み関連機能の回復機構・脳機能可塑性の解明:漢字・かなの読み機能について、脳機能外科術後に経時的(1週間、1か月、6か月、1年)に評価を行い、回復の変容・脳機能可塑性について、研究を推進した。てんかん外科症例の前部側頭葉切除前後における漢字・かな関連の脳機能含む意味記憶の機能代償機構について論文準備中である。研究計画の上記3研究項目それぞれで、研究実績に具体的に示したように、研究計画にそって、症例蓄積およびデータ解析、学会発表を順次行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
電気生理学的手法を中心に神経機能画像、神経心理学的手法を組み合わせ日本人特有の漢字・仮名読みの脳内処理機構の共通性・差異を、読み機能システムの探索から解明する。以下の研究3項目A-Cを目的にかかげ研究を引き続き推進する。 A. 漢字・仮名の読みの脳内領野の必須機能部位同定: 硬膜下電極留置の患者において、漢字・仮名読み関連の課題にて、課題中の①皮質脳波律動を直接記録し、誘発反応を認める電極の探索から機能関連領野を同定、②高頻度皮質電気刺激による詳細な機能評価(=必須部位同定)を行う。高頻度皮質電気刺激介入では課題遂行の状態を計測し、精神物理的評価(正答率・反応時間・エラーの内容)による定量的解析を行う。事象関連誘発電位のデータは、加算波形解析、認知関連の高周波γ活動解析に加え、デコーディング手法を用いて脳活動と相関する漢字・仮名読み機能構成要素を推定する。電極留置中のビデオ記録からの日常の読み動作時の脳波律動を用いる自然行動解析を進める。 B. 関連領野間の機能的結合地図作成:上記A.で同定される皮質への刺激による皮質皮質間誘発電位(CCEP)の計測の症例数を蓄積し、漢字・仮名読み機能関連皮質間の機能的結合を方向性を含めて明らかにし、機能野結合地図を作成する。 C. 日本語読み関連機能の回復機構・脳機能可塑性の解明:脳機能外科手術による漢字・かな読み関連の症状を有する症例を蓄積する。術前・術後において、神経心理課題、解剖的MRIを行い、切除皮質の脳機能を推定する。術後経時的に評価を行い、機能回復の変容・脳機能可塑性を明らかにする。 研究項目A、B、C で得られた結果を、電極位置情報、切除部位解剖情報を標準脳(MNI)上座標に集約し、これまでの脳損傷研究、機能画像研究との比較を行う。得られた結果を取りまとめ学会発表、論文にまとめていく。
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Causes of Carryover |
(理由) 頭蓋内電極留置に関して、使用する深部電極がリコールされ、使用再開が遅れており、症例蓄積も延期になっており、次年度に関連消耗品費を使用するため (使用計画)頭蓋内電極(ステレオ脳波用の深部電極)に関連する消耗品費を次年度に計画する。神経活動(皮質脳波)記録データ、神経心理検査データの保存用ハードディスク(設備備品費)購入を予定する。得られた研究成果を国内外の学会で発表し(研究成果発表:外国旅費、国内旅費)、学術論文にまとめる(論文投稿費)。
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[Journal Article] Connectivity Gradient in the Human Left Inferior Frontal Gyrus: Intraoperative Cortico-Cortical Evoked Potential Study2020
Author(s)
Takuro Nakae, Riki Matsumoto, Takeharu Kunieda, Yoshiki Arakawa, Katsuya Kobayashi, Akihiro Shimotake, Yukihiro Yamao, Takayuki Kikuchi, Toshihiko Aso, Masao Matsuhashi, Kazumichi Yoshida, Akio Ikeda, Ryosuke Takahashi, Matthew A Lambon Ralph, Susumu Miyamoto
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Journal Title
Cereb Cortex
Volume: 30
Pages: 4633-4650
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Engagement of cortico-cortical and cortico-subcortical networks in a patient with epileptic spasms: An integrated neurophysiological study2020
Author(s)
Takeshi Inoue, Katusya Kobayashi, Riki Matsumoto, Morito Inouchi, Masaya Togo, Junpei Togawa, Kiyohide Usami, Akihiro Shimotake, Masao Matsuhashi, Takayuki Kikuchi, Kazumichi Yoshida, Hisashi Kawawaki, Nobukatsu Sawamoto N, Takeharu Kunieda, Susumu Miyamoto, Ryosuke Takahashi, Akio Ikeda
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Journal Title
Clinical Neurophysiology
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed
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[Journal Article] A rational, multispectral mapping algorithm for primary motorcortex: A primary step before cortical stimulation2019
Author(s)
Shuichiro Neshige, Katsuya Kobayashi, Masao Matsuhashi, Takefumi Hitomi, Akihiro Shimotake, Takayuki Kikuchi, Kazumichi Yoshida, Takeharu Kunieda, Riki Matsumoto, Susumu Miyamoto, Ryosuke Takahashi, Hirofumi Maruyama, Akio Ikeda
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Journal Title
Epilepsia
Volume: 60
Pages: 547-559
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Human entorhinal cortex electrical stimulation evoked short-latency potentials in the broad neocortical regions: Evidence from cortico-cortical evoked potential recordings2019
Author(s)
Hirofumi Takeyama, Riki Matsumoto, Kiyohide Usami, Takuro Nakae, Katsuya Kobayashi, Akihiro Shimotake, Takayuki Kikuchi, Kazumichi Yoshida, Takeharu Kunieda, Susumu Miyamoto, Ryosuke Takahashi, Akio Ikeda
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Journal Title
Brain and Behavior
Volume: 9
Pages: e01366
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 視覚性物品呼称課題時の側頭葉底面と後頭葉の相互作用 硬膜下電極の高周波活動を用いた有向ネットワーク解析2019
Author(s)
宇佐美 清英, 松本 理器, Anna Korzeniewska, 下竹 昭寛, 中江 卓郎, 松橋 眞生, 菊池 隆幸, 吉田 和道, 國枝 武治, 髙橋 良輔, Nathan Crone, Matthew Lambon-Ralph, 池田 昭夫
Organizer
第53回日本てんかん学会学術集会
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[Presentation] Visual and auditory semantic processing converges in the anterior temporal lobe2019
Author(s)
Akihiro Shimotake, Riki Matsumoto, Kiyohide Usami, Takayuki Kikuchi, Kazumichi Yoshida, Masao Matsuhashi, Takeharu Kunieda, Susumu Miyamoto, Ryosuke Takahashi, Matthew Lambon-Ralph, Akio Ikeda,
Organizer
the Eleventh Annual Meeting of Society for the Neurobiology of Language (SNL 2019)
Int'l Joint Research
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