2019 Fiscal Year Research-status Report
筋萎縮性側索硬化症の運動ニューロン内に形成されるBunina小体の構成蛋白の探索
Project/Area Number |
19K17050
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
勝又 竜 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 研究員 (70778191)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / 神経変性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病理的特徴のうちの1つであるBunina小体の構成蛋白を明らかにするものである。 ALSは、進行性に上位及び下位運動ニューロンが変性し顔面、四肢、嚥下筋や呼吸筋の麻痺をきたして死に至る成人発症の神経変性疾患であり、その95%が孤発性ALSである。孤発性ALSでは病理的に共通した特徴が観察され、変性した運動ニューロン細胞質内に特徴的な2つの異常構造物、即ちubiquitin陽性封入体とBunina小体が確認される。ubiquitin陽性封入体の構成蛋白はTAR DNA-binding protein of 43 kDa (TDP-43)であることは既に2006年に判明しているが、一方でBunina小体の構成蛋白は不明である。 研究代表者は各種手法を比較検討した後に、Bunina小体のレーザーマイクロダイセクション法による切り出しと集積をした後に、それをサンプルとして質量分析により解析を行う方法を選択した。 この実験手法が実現可能かどうか複数回の予備的実験により研究代表者は既に確認しており、質量分析の検出感度としてはやや劣るものの、可能ではあることを確認している。最終的に15000個のBunina小体の切り出しに成功し、現在候補となる蛋白を数個程度に絞り込んでおり、今後、免疫組織染色法により、その再現性確認を行う予定である。既に再現性確認のための実験(免疫組織染色)を行ったが、現在までにBunina小体に局在を確認できた蛋白は探し出されていない。しかし、その抗体に染色性を持つと考えられる他組織切片でも、染色性が確認できなかったことから、抗体の種類あるいは染色時の条件が不適であったと考えている。免疫組織染色は、一般に抗体の種類、条件検討を行っていく必要があり、今後、抗体や免疫組織染色の条件検討を行うことで、引き続き評価していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、本研究の研究手法として当初挙げた以下の3つの段階がある。 1.Bunina小体のレーザーマイクロダイセクション法による切り出しと集積 2.集積したBunina小体の質量分析による解析 3.免疫組織化学法によるBunina小体構成蛋白の確認 現在のところ、1、2、までは終了しており、あとは免疫組織化学法による確認の段階に至っているため、おおむね研究は進行していると考えている。しかし一方で、3の段階の研究を行うにあたって、いくつかの予備的検討を行ったものの、明らかな結果を得ていない。今後、抗体の種類の選択や条件検討が必要であることが明確となっており、このことが今後の研究進展の問題となる可能性もある。この問題については引き続き、条件検討や抗体の選別によって解決を目指す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、質量分析の結果の確認を行う必要がある段階であり、その確認は主に面積組織染色法による。今回、既にいくつかの蛋白を候補として見出しているもの、免疫組織染色法の手技や条件上の問題のためと考えられるが、その確認にまで至っていない。これは、今後、抗体の選別を含めた条件検討を主に行っていく必要があることを示している。今後の研究の推進としては、早急に上記の免疫組織染色法の条件検討を終了させる事である。 本研究で用いた、改良されたLMD法を用いて集積した試料に対して質量分析を行う手法は、ALS以外の他疾患にも応用可能であり、神経変性疾患には神経細胞内に異常構造物を生じる疾患はALS以外にも多く、そのほとんどはBunina小体よりも大きいもので解析はより容易と考えられる。他疾患への応用という観点から、本研究を推進することも考えている。 また、レーザーマイクロダイセクション法による切り出しと集積後に質量分析を行うという手法には変わりはないものの、最近の技術進歩により、本研究で用いた手法よりもやや感度が高いと考えられる手法も、現在、他研究室により開発されつつある。上述の免疫組織染色による今回の質量分析結果の確認ができなかった場合、その様な新規の手法を選択することも、今後の研究推進の方法として考えている。
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Causes of Carryover |
現在、当研究室内に既にある研究実験器具、及び試薬を使用できる環境であり、また、特に質量分析以降の実験については、現時点では予備的な実験に留まっている。そのため、当研究室内で利用可能な抗体を用いたことで、今年度の費用負担が抑えられた。今後の実験は、新規の抗体の購入などが必要なため、費用はそちらに充てる予定である。
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