2020 Fiscal Year Research-status Report
認知機能形成に関与する遺伝子sez6の選択的スプライシング制御の役割
Project/Area Number |
19K17064
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
日高 千晴 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (10783673)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | スプライスバリアント / Sez6 / 神経突起形成 / 大脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞は「シナプス」と呼ばれる細胞間接着構造により神経回路網を構築することが知られるが、この構築された神経回路網は一度形成すると永続的に固定化されるものではなく、常に「形成と消失を繰り返す」ことで神経回路網構造を維持している。このシナプスは神経細胞の軸索と樹状突起の間で形成される結合で、樹状突起側には「スパイン」と呼ばれる特殊な構造が構築される。 本研究では、この樹状突起スパインの形成に関与することが示唆されている脳に特異的に発現するSez6のスプライスバリアントの生理的機能を明らかにすることを目的に、昨年度は各スプライスバリアントの時空間的発現の変動について解析を行った。 その結果、細胞内局在を大きく変化させるスプライスバリアントは胎生期から成体期にかけて発現が減少することがわかった。一方、他のスプライスバリアントは逆に成体期の方が発現が高い結果が得られた。また、Sez6はてんかん誘発剤の投与により遺伝子発現が増加することが知られている。そこで、それぞれのスプライスバリアントがてんかん誘発剤により遺伝子発現が誘導されるのかについて初代神経培養細胞で検証を行った。その結果、どのスプライスバリアントもてんかん誘発剤の投与により遺伝子の発現が増加した。さらに、てんかん誘発剤の濃度を変化させて検証を行ったところ、遺伝子発現の挙動は各スプライスバリアントで異なっていた。 本年度は、初年度から引き続き行っているRNAレベルで遺伝子の発現量を検証する研究と並行してタンパク質レベルでSez6の各スプライスバリアントの生理的機能を解析するため、各スプライスバリアントを単独で発現する発現ベクターを作成し、神経培養細胞を用いてSez6スプライスバリアントの生理的な機能の解析を試みた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は新たに作成した各スプライスバリアント発現ベクターを神経培養細胞に遺伝子導入し、各スプライスバリアントの神経突起形態への影響を解析する予定であったが、想定よりも各スプライスバリアント発現ベクターの構築に時間がかかり、年度内に機能解析に着手できなかった。そのため、来年度に各スプライスバリアントの機能解析を行う。 一方、RNAレベルでの各スプライスバリアントの発現の比較については、脳領域・月齢・薬剤刺激等のSez6の時空間的な遺伝子の発現について予定していた解析が概ね完了したため、比較的順調に研究が進んでいると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はスプライスバリアント発現ベクターを用いて樹状突起形態形成への影響を解析し、Sez6のスプライスバリアントが神経突起形態に与える影響を検証する。また、In vivoでの各スプライスバリアントの影響についても検討を行うための解析システムの構築を行う。
|
Causes of Carryover |
最終的な本年度の残予算が少額であったため、残予算分を次年度に繰り越すこととした
|