2020 Fiscal Year Research-status Report
子の愛着行動の神経基盤解明:仔ラットの吸乳、母への接触、輸送反応に着目した検討
Project/Area Number |
19K17074
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大村 菜美 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (50735082)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 吸乳行動 / 嗅球切除 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年に引き続き、吸乳や母への接触などの愛着行動の有無の条件で作成した仔ラット脳サンプルから、免疫組織化学染色によって最初期遺伝子cfosの発現を調べ、神経活性が変化する神経核を調べた。母に接触し吸乳した仔ラット群では、母子分離群と比較して、舌下神経核や孤束核といった吸乳行動に関わる脳部位の神経細胞活性化を確認できた。現在、前年度までの仔ラットへの除脳や局所脳領域損傷操作から吸乳行動や母親との接触による行動鎮静化への関与が疑われる脳領域(嗅球付近や前脳底部領域)を中心にcfos発現による神経活性化部位を調べ、吸乳や接触に伴い神経活性が変化する脳部位検出を進めている。 また、仔ラットの吸乳行動に焦点を当てて詳細に観察し、一連の吸乳行動への嗅覚システムの関与と発達変化を調べた。嗅球切除された生後12日齢の仔ラットは、実験者が仔ラットの口に母の乳首を押し当て接触させても乳首を咥えることができず、乳首探索反応も示さなかった。処置から3日後、わずかに一部の仔ラットの吸乳行動が回復したが体重が増加するような十分な吸乳はできなかった。これに対し、生後2日齢で嗅球切除した仔ラットでは、翌日でも乳首を咥えることができ、母の腹から乳首を探索するscanning様の動きも観察できた。このことから仔ラットの吸乳行動の嗅覚システム依存性は生後発達によって変化し、生後12日齢の仔ラットの吸乳行動は、新生仔よりも嗅覚システムに依存していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感染拡大防止のための研究活動自粛期間があり、実験を進めることが難しい時期があったが、既に作成しておいたサンプルやデータを解析し研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
愛着行動有無の条件によって作成した脳サンプルを用い、仔ラットの吸乳行動や母親との接触による行動鎮静化への関与が疑われる脳領域を中心に神経活性が変化する脳部位検出を進める。脳部位が定まり次第、局所脳部位破壊実験を行い影響を調べる。
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Causes of Carryover |
感染拡大防止のための研究活動自粛期間があり実験数が減少したことや、学会がオンラインで開催され旅費が不要であったことから次年度使用額が生じた。 研究のペースを上げるため、次年度は人件費にもあてる予定である。
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