2019 Fiscal Year Research-status Report
神経系における熱ショックたんぱく質の発現低下が統合失調症に及ぼす影響の解明
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19K17082
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
趙 治磊 東京大学, ニューロインテリジェンス国際研究機構, 特任研究員 (50761277)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 熱ショックタンパク質 / 脳・神経 / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症の発症には遺伝的要因に加え、環境要因も関連することが知られるが、その詳細はいまだ不明な点が多い。申請者の先行研究では、熱ショックたんぱく質であるHSP70(Heat Shock 70kDa Protein)が統合失調症の病態に関わる有力な候補因子であることを突き止めた。本研究では、HSP70の遺伝子発現異常に着目し、神経系への影響を中心に、分子生物学的手法にて検討し、その作用機序を明らかにすることで病態の解明や、今後の診断・治療法の開発につながることを目的としている。 初年度では、長期的なRNA干渉効果を発揮することができるヘアピン型RNA(shRNA)発現プラスミドベクターを用いて、HSP70遺伝子のノックダウンを行い、細胞レベルにおけるHSP70の特異的な分子情報伝達経路を同定することに主眼を置いていた。 まず、神経細胞特異的な伝達経路を解明するために、ヒト神経芽細胞腫に由来の細胞株であるSK-N-SH細胞、HSP70のノックダウン安定導入細胞株と対照する細胞株を樹立し、ノックダウン効率の高いクローンを選択することに成功した。 そして、レチノイン酸による成熟ニューロンへの分化を行い、分化した安定的HSP70ノックダウンしたSK-N-SH 細胞とその対照細胞の遺伝子転写産物を抽出した。HSP70ノックダウンにより神経細胞特異的に変動する遺伝子を網羅的に解明するため、当初予定していた解析法を発展させ、次世代シーケンサーを用いて、RNAの網羅的な発現解析(RNA-seq)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように,申請者は、当初の計画通り、HSP70遺伝子のノックダウン安定導入細胞株を樹立し、レチノイン酸による成熟ニューロンへの分化誘導を行った上で、全遺伝子転写産物を抽出し、網羅的な遺伝子発現解析を行った。また、計画当初はマイクロアレイによる網羅的解析を予定していたが、解析可能な範囲の広さを検討した結果、RNA-seqによる全トランスクリプトーム解析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、HSP70の発現阻害により応答が減弱する遺伝子を解析する上で、HSP70の下流経路の情報を明確にする。さらに、HSP70をノックダウンした場合、その上流に位置する因子あるいは別経路の伝達因子の活性が代償的に増加する可能性がある因子を利用する。活性が増加した因子の中から、新たなHSP70の制御候補を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
細胞ノックダウン実験が順調に進行したため、物品費については想定していたよりも消耗品の購入額が少なくなった。
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