2020 Fiscal Year Research-status Report
うつ病バイオマーカーとしての長鎖非コードRNA~トランスレーショナルな視点から~
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19K17090
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
關 友恵 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (50821865)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | うつ病 / バイオマーカー / 長鎖非コードRNA / うつ病モデルマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、lncRNAがエピジェネティックな機能を介してうつ病の病態に関与しているのではないか、という仮説のもと、白血球におけるlncRNAの発現変化がうつ病のバイオマーカーになりうるかを検証した。定量的逆転写リアルタイムPCR(RT-PCR)分析を用いて、大うつ病性障害患者(MDD患者)と健常者の末梢血白血球における発現量を比較検討した。解析対象のlncRNAはこれまで腫瘍や神経疾患など、その機能の一部がすでに報告されているlncRNAのうち83種類を選択した。焦点を絞ったターゲットを分析することで、うつ病の病態生理に特有のlncRNAを検索し以前の研究から得られた知見に基づいてその機能の洞察を深めることを目指した。うつ状態のMDD患者29名と健常者29名の末梢血白血球における種々のlncRNA発現解析を行った。健常者と比較して、MDD患者ではRMRPの発現が減少しており、Y5、MER11c、PCAT1、PCAT29の発現が増加していた。RMRPの発現レベルは、うつ症状の重症度と負の相関を認め、抗うつ薬との相関は見られなかった。さらに、コルチコステロンを投与したうつ病モデルマウスの末梢血白血球においてもRMRP発現はコントロールマウスと比較して減少しており、これはヒトと同様の結果であった。RMRPは、核、リボソーム、ミトコンドリアにおいて多彩な機能を担っており、これらを含む細胞小器官を繋ぐ重要なハブとして働き、ストレスや気分の調整に関与している可能性が示唆された。そこで、別サンプル集団のMDD患者19人、健常者19人でRMRPの発現レベルを再検証したところ、健常者と比較してうつ状態で発現レベルの減少がみられ、更に寛解期でも発現レベルの減少が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで得られている成果について論文化して報告ができている。また、新たな患者・健常者サンプルにて再検証を行うことができ、うつ状態・寛解状態ともに発現減少していたという新たな知見がえられた。このことでうつ病に関与する候補遺伝子としてRMRPはより有力と考えられ、うつ病の病態解明において更に前進した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスでの発現が認められており、ヒトとモデルマウスでの結果が一致しているRMRPについて、どのようにうつ病の病態生理に関与しているのか、マウスを用いて過剰発現やノックダウンなどの遺伝子操作により追究していく。
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Causes of Carryover |
令和2年度は新しい患者のリクルートと、患者サンプルの解析を行ったため、動物実験に用いることを予定していた費用が次年度への繰り越しとして生じた。
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