2019 Fiscal Year Research-status Report
うつ病における前頭前野テロメア短縮の病態生理学的意義の解明
Project/Area Number |
19K17095
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
鹿内 浩樹 北海道医療大学, 薬学部, 講師 (00632556)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | うつ病 / テロメラーゼ / 海馬 / 内側前頭前野 |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体末端に存在して繰り返しDNA配列を有しているテロメアは、伸長酵素テロメラーゼによって再生・維持されるが、一般的に老化・細胞分裂毎に短縮していく。しかし、がん細胞においてはテロメラーゼ活性の亢進が認められており、細胞不死化の要因であると推測されている。その一方で、糖尿病や高血圧、さらにはうつ病やPTSDなどの精神疾患においてはテロメア長の異常短縮が報告されている。申請者の研究グループでは、雄性Wistar/STラットの生後3週齢時にストレスを負荷することで作製されるうつ病動物モデル (幼若期ストレスモデル)を研究する過程で、脳内においてテロメア長が異常に短縮しているという興味深い所見を発見した。これらの所見を基に本研究課題では、うつ病におけるテロメア長短縮のメカニズム解明や、その病態生理学的な意義について、うつ病モデル動物を用いて追究していく。 平成31年度-令和1年度は、情動調節の責任脳部位である「前頭前野」「海馬」「扁桃体」に注目し、脳領域を分けたTERT mRNAおよびタンパク発現量解析を実施してきた。また、TERT発現量の調節因子としてがん遺伝子の一つであるc-Mycについて検証を進めてきた。その結果、特に前頭前野および海馬において、TERT mRNAやタンパク発現に異常が生じていることが明らかとなる一方、扁桃体においては変化は認められなかった。 次年度は、この前頭前野および海馬においてTERTを部位特異的にノックアウトすることで、うつ様行動が生じるか行動薬理学的な検討をするとともに、TERT発現量の調節因子であるc-Myc遺伝子とうつ病の関連を追究していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年2~3月に遺伝子改変動物を導入して繁殖後、2020年4~5月より行動薬理学実験を試みるつもりであったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、十分に実験を進めることが困難になると予想し、導入を次年度に見送った。そのため、当初予定した研究計画より「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
行動薬理学的解析の手技・装置については、すでに申請者は修得・構築済みであるので、出来るだけ早く遺伝子改変動物を本学動物実験センターに導入して繁殖させ、安定した実験動物の供給維持を目指し、計画の遅れを取り戻したい。実験動物の導入作業と並行して、c-Myc遺伝子以外の他のTERT調節因子についてもmRNA・タンパクレベルの検証を重ねて、より広い研究結果につなげていきたい。
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Causes of Carryover |
2020年2~3月に遺伝子改変動物を輸入し、本学動物実験センターに導入して継代繁殖をする予定であったが、新型コロナウイルス感染症流行の影響に鑑みて、やむを得ず次年度に先送りしたため、次年度使用額が生じた。情勢が落ち着き次第、2020年度の早い時期に遺伝子改変動物を導入するために使用する予定である。
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