2020 Fiscal Year Research-status Report
前頭側頭型認知症の病態における細胞ストレス関連翻訳機構の関与について
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19K17111
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
近江 翼 埼玉大学, 教育機構, 准教授 (00752122)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 前頭側頭型認知症 |
Outline of Annual Research Achievements |
前頭側頭型認知症(FTD)は、前頭葉および側頭葉に選択的な強い神経変性をきたし、人格変化や強い行動障害を伴うため、精神科的介入を要することも多い認知症として知られている。4大認知症の中でも、未だ病態が解明されていないことが多く、治療薬も存在しないことから、その治療薬の開発に期待が集まっている。近年、FTDの原因遺伝子であるC9orf72のGGGGCC異常延長リピートは、開始コドン非依存性の特異なメカニズム(non-AUG翻訳)を介してジペプチドリピートタンパク(DPR)へと翻訳され、DPRは強い神経毒性を有し、それが病態の一因となっている可能性が示唆された。また、ストレスに晒された細胞はストレス顆粒を形成し、mRNAおよび翻訳開始因子をその中に閉じ込めて翻訳を抑制する。同時に、ストレス応答下に誘導される代替翻訳開始因子を用いた別の翻訳機構により、シャペロンなどの細胞ストレス応答タンパクを優先的に翻訳することで細胞の生存維持を図ることが知られている。FTDの神経病理所見にみられるTDP-43やFUS陽性の細胞内封入体はストレス顆粒が不溶化したものとされており、神経病理学的にも細胞ストレス応答との深い関連が示唆されている。これらのことから、細胞のストレス応答下で選択的に誘導される翻訳機構とDPR産生の関係の詳細が明らかになれば、FTDの新規治療標的の同定も可能になり得ると考えられる。本研究では、non-AUG翻訳が用いる翻訳開始因子またはその調節因子の同定について様々な角度から妥当性、蓋然性の検証を進めており、有望な候補分子が同定されつつある。引き続き検証を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画立案時には想定していなかった、所属研究機関の異動があったため、現在の研究機関での研究環境の整備を同時に進めていっているが難渋している。また、新型コロナウィルス感染拡大の影響(所属機関での感染防止対策業務、通常業務の非効率化など)もあり、相当の時間を割くことになった。そのため、研究に充てる時間の確保が難しくなり、研究の進展が全体的に遅れることになってしまった。しかし、研究そのものは少しずつ進展しており、下記発表を行っている。これらを総合的に判断すれば,研究の進捗状況としては、「やや遅れている。」と判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
現在所属している研究機関での研究環境の整備を引き続き進めていき、当該因子の機能についてより詳細な部分を明らかにし、英文論文として発表する予定である。
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Causes of Carryover |
同定した因子の作用機序の検証の過程で興味深い新たな現象を確認したため、その知見を確認するために様々な角度から実験を行っており、今後も継続していく予定である。また、所属研究機関の異動に伴う、研究機関での研究環境の整備を同時に進めていく予定である。次年度はnon-AUG翻訳の効率を検証する実験、解析に研究費を集中的に利用し、当初の研究目的を達成する見込みである。
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Research Products
(2 results)