2019 Fiscal Year Research-status Report
アルンジン酸による抗うつ効果の検討とその作用機序解明
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19K17112
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
野崎 香菜子 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10814329)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | うつ病 / グルタミン酸トランスポーター / アンヘドニア / 慢性社会的敗北ストレスモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究では、うつ病患者の脳内においてグルタミン酸を介した神経伝達系に異常が生じていることを示唆する結果が報告されており、従来のモノアミン仮説に加え、うつ病病態におけるグルタミン酸神経伝達系の関与が示唆されている。シナプス周辺部における細胞外の過剰なグルタミン酸は、細胞毒性や神経活動異常を生じるため、通常はアストロサイトに局在するグルタミン酸輸送体(GLT-1およびGLAST)により厳密に制御されているが、うつ病患者では、何らかの理由によりその均衡が崩れている可能性が考えられる。そのため、細胞外の過剰なグルタミン酸を抑えることでうつ病様行動の改善に繋がることが期待できる。 我々はうつ病症状の改善が期待できる薬剤として、脳梗塞治療薬として臨床試験中のアルンジン酸に着目した。同薬剤はGLT1、GLASTの発現増加を誘導することから、細胞外の過剰なグルタミン酸を抑えることが期待される。そこで本研究ではこれまでに、急性および慢性ストレスうつ病モデルマウスのうつ病関連行動に対するアルンジン酸の薬効評価を行った。その結果、慢性社会的敗北ストレスモデルにおいて認められる数種類のうつ病様行動がアルンジン酸投与群において減少していることを明らかにすることができた。既にそのマウスの脳を対象とした組織学的解析を実施しており、今後はアルンジン酸の薬効について、その作用機序を検討していく予定である。さらに、同薬剤が実際にグルタミン酸トランスポーターの発現を亢進しているかどうか検討するため、定量PCRも併せて実施していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は研究代表者の所属異動のため、当初の実験計画よりやや遅れが生じた。ただ、急性薬物投与モデルだけでなく、慢性社会的敗北ストレスモデルにおける一部のうつ病様行動に対して、アルンジン酸の投与が抑制効果をもたらすことを確認した。現在、そうした抑制効果が認められた個体の脳を対象に組織学実験を行っており、ストレス負荷やアルンジン酸投与によりうつ病様行動が変化した際のc-Fosタンパク質の発現変動を解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は既に進めている組織学的解析により、うつ病様行動の変化に伴って神経活動が変動する脳領域の探索を行う。併せて、アルンジン酸によって発現上昇が誘導されたことが期待されるグルタミン酸トランスポーター(GLT1,GLAST)について各脳領域で定量PCRを実施し、アルンジン酸の実質的な作用点となる神経核および神経回路について検討を行う予定である。
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Research Products
(13 results)