2019 Fiscal Year Research-status Report
怒り・攻撃性がcomplex PTSD症状に及ぼす影響に関する研究
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19K17121
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
千葉 比呂美 久留米大学, 医学部, 助教 (60648137)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 複雑性PTSD / 怒り / 攻撃性 |
Outline of Annual Research Achievements |
児童虐待やDV,繰り返される性暴力など,人の心に大きな傷を残すような被害を受けた際,感情面が不安定になり,怒りや攻撃性が噴出することがある。このような,心的外傷後に噴出する怒り・攻撃性は,PTSD回復遅延の一因となっている。本課題ではこうした反復・長期にわたるトラウマ体験による疾患群であるComplex PTSDと怒り・攻撃性との関連について多角的に研究している。本研究では、1) 心的外傷後の怒り・攻撃性に関する心理尺度の開発,2)ハイリスク群を対象にした怒り・攻撃性の影響に関する質問紙調査,3)臨床例を対象とした生理学的・内分泌学的測定による,怒り・攻撃性に関する客観的指標の探索の3側面から怒り・攻撃性とComplex PTSDとの関連を包括的に明らかにすることを目指している。本研究はトラウマ関連疾患の病態理解や治療に大きく貢献すると考えられる。2019年度にはまず,ICD-11において新たに疾患群として示されるComplex PTSDと関連する疾患に関する概要について総説を作成し整理を行った。ついで,怒りや攻撃性といった感情面でのコントロールを重視する治療技法についても総説を作成することにより概念整理を行った。心的外傷後の怒り・攻撃性に関する尺度開発を当初計画したが,既存の尺度の有用性を確認することが本邦では求められることから,DSM-5において有用と考えられている怒り・攻撃性尺度の日本語版を原著者の許諾を得て試作し,他の尺度とともに検証する計画を立案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題に関する概念整理を行い,総説の形で出版することができた。また,怒り・攻撃性の新たな尺度を開発する前提として必要な,既存尺度の有用性に関する研究計画にも着手している。これらより,おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
心的外傷後の怒り・攻撃性に関する既存の尺度の有用性を確認する調査研究を実施し,結果をまとめて論文化することを計画する。さらに,その成果を活用して新たな尺度開発を計画する。また,可能であれば怒り・攻撃性だけではなく他の感情も包括的に検討することができるような発展的な研究計画立案も検討したい。
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Causes of Carryover |
昨年度は初年度であり,概念整理を中心として研究計画を遂行した結果,次年度使用額が生じた。しかしながら,2020年度は新たに論文投稿や研究実施のための費用が既に生じていることから,研究計画に沿って使用する予定である。
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