2021 Fiscal Year Research-status Report
子宮頸癌の化学放射線療法におけるPD-L1とCD8陽性T細胞の動態研究
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19K17153
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
宮田 裕作 久留米大学, 医学部, 助教 (60647816)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | PD-L1 / CD163 / 子宮頸癌 / 腫瘍微小環境 / 化学放射線療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮頸癌に対して,体外照射(体外の線源からの照射)を開始後,治療の途中から,照射線量の高い子宮腔内照射を組み合わせる,根治的な放射線療法が確立されている.しかし治療後早期に再発転移を来す治療抵抗例が存在し,その一因として,放射線療法により誘導された免疫反応から,腫瘍細胞が逃避することが考えられる.この機序の一つとして, PD-L1分子と,CD8陽性T細胞表面のPD-1分子との相互作用による,抗腫瘍効果の不活化が関与していることが考えられている. そこで,根治的放射線療法を行った子宮頸癌患者26例を,治療後2年間で再発転移がない群(治療奏功群)とある群(治療抵抗群)に分け,治療前から治療中,治療後にかけて,定期的に採取した腫瘍細胞周囲のPD-L1やPD-1等の腫瘍免疫マーカーの発現率を評価した.その結果,治療抵抗群では,子宮腔内照射を開始後に,腫瘍細胞周囲に存在するマクロファージ表面のPD-L1の発現率が治療奏功群と比較して有意に高く,また腫瘍増殖を惹起するM2マクロファージのマーカーであるCD163の発現率が高い,つまりM2マクロファージの細胞数が多いことが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験,統計解析は終了した.この解析作業に時間がかかったため,研究課題は予定よりやや遅れた.ただ現在論文化も終盤であり,現在投稿準備中である.
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Strategy for Future Research Activity |
M2マクロファージの細胞数やPD-L1発現率は酸素濃度に左右されること,また放射線の治療効果も酸素濃度に依存することが,他の研究者から報告されている.従って本研究結果から子宮腔内照射後に生じた腫瘍細胞周囲の酸素濃度の変化が,免疫反応を介して,治療効果に関わると予想される.また体外照射ではなく,子宮腔内照射後に免疫反応に差が生じたということは,照射線量や照射法の違いが,この様な反応差を生じた原因に関わる可能性がある.しかし,照射線量や照射法の違いが,腫瘍細胞周囲の酸素環境と免疫反応に与える影響や,子宮腔内照射を開始後に,免疫反応や治療効果に差が出る根本の原因は,現時点で解明されていない.そこで申請者は,子宮頸癌の根治的放射線療法において,照射線量や照射法の違いによって,腫瘍細胞周囲の酸素濃度がどの様に変化し,それが免疫反応を介して,治療効果にどのような影響をもたらすのかを明らかにする目的に,低酸素環境で活性化するHIFタンパク質等に着目し,令和4年度の基盤研究Cに採用された「子宮腔内照射による酸素濃度の変化が子宮頸癌の予後に与える影響」という新たな研究を立ち上げ,その準備を行っている.現在申請者が所属する施設の倫理委員会の承認を得る準備中である.
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Causes of Carryover |
現在論文化が終盤であるが,現時点での本研究に関する他施設の動向調査のための学会参加費用および論文校正費用および投稿費用を予定しているため.
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