2019 Fiscal Year Research-status Report
小児重粒子線治療における2次粒子線の曝露による発がんリスクの推定
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19K17155
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
松本 真之介 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 物理工学部, 博士研究員(任常) (10742744)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 重粒子線治療 / リスク評価 / 2次がん / 放射線防護 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の概要及び実績:今年度は、小児小脳上衣腫の炭素線治療における2次粒子線の線量をモンテカルロ計算コードPHITSを用いて算出した。モンテカルロ計算は研究代表者の所属であるQST-NIRSで運用中のスキャニング治療と、過去運用していたパッシブ治療を計算し比較した、更に先行研究で示されている同様の条件で計算された陽子線治療の中性子等価線量と比較した。計算結果は、スキャニング治療はパッシブ治療と比較して照射野外の線量を7-15%に減少出来ること、炭素線治療は陽子線治療と比較して照射野外の中性子線量を5-16%に減少出来る事を示した。当該研究結果はMedical Physics誌に掲載され(Medical physics,46(12),5824-5832 (2019))、第117回医学物理学会及び3rd International Conference on Dosimetry and its Applicationsで口頭発表した。当該研究の手法について以下に詳細を示す。 研究手法の詳細:本研究はモンテカルロ計算を用いて評価した。モンテカルロ計算で炭素線治療を受ける患者の2次粒子線被ばく線量を正しく算出するため、治療装置と患者のジオメトリを詳細にモデリングし計算した。炭素線治療装置については、コリメータやリッジフィルタ等の幾何学的構造及び材質について図面等を用いモデリングし、モンテカルロ計算で得られた出力と実測の値を比較しモデリングの精度を検証した結果、良好な一致が得られた。人体ファントムについては、5 歳及の小児ファントムをモンテカルロコードPHITSにモデリングした。モンテカルロ計算では小児の脳腫瘍で好発し放射線治療を実施する小脳上衣腫を模擬して計算パラメータを設定した。リスク評価のパラメータとして平均吸収線量及び線量平均線量当量及び等価線量を各臓器毎にPHITSで求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度計画としては炭素線治療装置及び人体ファントムのモデリング、リスク評価のパラメータ(平均急線量、線量平均線量等量、等価線量)の線量計算を予定していた。これらについては“研究実績の概要”で示したとおり、研究結果が医学物理分野の学術雑誌に掲載及び国際的な学術会議の口述発表で採択されるなど順調に進展している。 それに加えて、2020年度計画のリスクモデルを用いた新しい2次がんリスクの比較の前段階として、現在一般的にリスクの評価に用いられている、臓器平均の吸収線量、線量当量及び等価線量を用いた比較を当該論文において報告した。2020年度は2019年度に評価した現在一般的に用いられている2次がんリスク評価手法と新しい2次がんリスクの評価手法を比較する事で新しい手法の有用性を示す。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度計画は概ね順調に進展したため、2020年度も研究開始時に策定した研究計画に基づき実施する。実施内容は、①モンテカルロ計算で求めたリスク評価のパラメータ(平均急線量、線量平均線量等量、等価線量)と、原爆被ばく者及びホジキンリンパ腫の放射線治療経験者等の2次がんリスクデータに基づくリスクモデルから 炭素線治療における2次がんの生涯寄与リスクを求める。②2019年度に実施した評価結果と2020年度に実施する新しい2次ガンリスクの評価結果を比較し新しいリスク評価手法の有用性を示す。 具体的なリスクの評価方法は、a.現在臓器平均で評価している線量について放射線治療で一般的に用いられるDose volume histogram (DVH)の形式で取得する。b.先行研究としてSchneider et.al., Geng et.al., Eley et.al.が他の放射線治療で実施した新しい2次がんリスク評価式を基として炭素線治療の2次がんリスクモデルを策定しそれにaで取得したDVH形式のリスク評価パラメータを当てはめ、2次がんリスクを評価する。c.各臓器毎に従来法と新しい手法の結果を比較する。
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Causes of Carryover |
ワークステーション購入費及び旅費について、経費予定額を大幅に削減した上で契約ができた為次年度使用額が生じた。 2020年度の使用計画については、論文作成やデータ処理に用いる計算機一式の購入や論文の英文校正等に使用する。
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Research Products
(4 results)