2022 Fiscal Year Research-status Report
膵臓がん細胞株Panc-1における IL-6による放射線抵抗性獲得機構の解明
Project/Area Number |
19K17195
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
玉利 勇樹 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20794944)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インターロイキン6 / 放射線抵抗性 / mTOR / STAT3 |
Outline of Annual Research Achievements |
Panc-1と他の膵臓がん由来細胞株とを比較するためにヒト膵臓がん由来細胞株であるMIAPaCa-2を追加して実験を行った。Panc-1と比較してMIAPaCa-2のIL-6産生能力は非常に高く、両細胞とも細胞膜上にgp130の存在が確認された。Panc-1ではIL-6を添加することで放射線抵抗性を獲得することが確認されたが、MIAPaCa-2ではIL-6添加による放射線抵抗性獲得は確認されなかった。ウェスタンブロット法によりPanc-1のmTORおよびSTAT3について調査したところIL-6濃度によるmTORおよびSTAT3発現量に変化はなかった。しかし、IL-6濃度依存的にmTORおよびSTAT3のリン酸化が確認された。またラパマイシンを添加することでmTORおよびSTAT3のリン酸化が強く抑制された。ラパマイシン投与によりmTORの関与を調査したところ、両細胞でラパマイシン投与によりX線照射による生存率が低下した。さらにPanc-1細胞を使用してピルビン酸濃度、NAD+およびNADHについて測定を行った。ピルビン酸およびNAD+濃度はX線照射により増加したが、IL-6の投与により減少した。このIL-6による効果はラパマイシン投与により軽減された。NADH濃度はX線照射により減少したが、IL-6の投与により増加した。このIL-6による効果はラパマイシン投与により軽減された。 本研究により膵臓がん細胞の放射線抵抗性獲得機構の一つとしてmTORやSTAT3を介したIL-6シグナル経路がミトコンドリアでのエネルギー代謝経路(電子伝達系)に影響を及ぼし活性酸素の産生を抑制するということが示唆された。本研究の研究成果は放射線抵抗性である膵臓がんの放射線治療適応拡大のために重要なものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度まではコロナウイルス感染症対策により大幅な研究の遅延が生じていたが、in vitroの実験はおおむね終了した。鶏卵腫瘍移植モデルによる実験には至っていないが、現在これまでに研究成果について論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在投稿中である論文について適宜追加実験を行いつつ掲載を目指す。
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Causes of Carryover |
実験機器の故障による研究進捗の遅延により、実験に遅延が生じ次年度への延長申請を行った。 論文投稿費や追加実験費用、今年度の日本放射線影響学会の参加費および交通費に使用予定である。
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