2019 Fiscal Year Research-status Report
正常筋および骨への晩期的影響をもたらすBNCTとX線との基礎的比較解析
Project/Area Number |
19K17230
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
岩崎 遼太 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (20782139)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ホウ素中性子捕捉療法 / 骨 / 晩期障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
BNCTでは組織中ホウ素濃度が処方線量と深く関連するため、まずC3Hマウスにホウ素薬剤(p-boronophenylalanine:BPA)を125、250、500 mg/kgにて皮下投与し、その30、60、90、120分後までの骨組織中ホウ素濃度を即発ガンマ線解析にて測定した。その結果、ホウ素濃度はBPA用量依存性に増加し、投与120分後までほぼ一定の値を示した。続いて、マウス右後肢に対しX線12、24、36、48、60 Gyの単回照射を行った12週間後に脛骨を採取し、骨の晩期障害の指標として3点曲げ試験による骨強度解析を実施した。その結果、骨強度は36 Gy以上の線量により有意に低下した。これらの結果を元に、骨強度に影響を及ぼさないX線最大線量である24 Gyを照射した翌日、さらに以下の4群に分けた90分間の中性子線照射を実施した:中性子線単独群、および中性子線にBPA 125 mg/kg、BPA 250 mg/kg、BPA 500 mg/kg投与を併用させた3群。12週間後に脛骨を採取し骨強度を解析したところ、4群いずれも骨強度は対照群(X線24 Gy照射群)と比較して8割程度まで一律に低下する結果となった。 骨格筋に対する晩期障害については、骨への照射を行ったマウスから下腿筋群を採取しマッソントリクローム染色による線維化の評価を試みた。しかしいずれにおいても線維化は確認されなかったため、まずはX線照射により筋へ線維化を惹起するモデルマウスを作成することとした。マウス系統に、より放射線感受性の高いC57BL/6を用いたところ、75Gy/3Fr照射によって12週間後に線維化が引き起こされるという結果を得た。また、ウェスタンブロット法により筋組織中TGFβの増加が検出され、これはC3Hマウスと比べC57BL/6において照射早期から増加傾向にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原子炉の限られたマシンタイムを最大限利用し、当初予定していた実験は概ね終了させることができた。筋についてはまだ中性子線照射に至っていないが、組織中ホウ素濃度の測定は終了しているためモデルマウスの作成が終わればスムーズに移行できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
骨については中性子線量をさらに段階化させた上で照射実験を行っていく。また、骨強度の低下に対するBPAの関与を調べるため、αオートラジオグラフィーにより骨におけるホウ素の局在を解析する。筋については系統間比較を行いつつ線維化モデルを確立させる。その上でBNCTが筋線維化を誘発させる可能性について、令和元年度同様TGFβの解析および病理組織学的検査による実験を実施していく。
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Causes of Carryover |
当該年度は、実験に使用する物品が既存の物でまかなえたものがあり、これが次年度使用額が生じた主な理由である。次年度には当初の予定よりもマウスの系統を増やした実験を予定しているため、マウス購入数が増え、またこれに伴い購入する物品も増えることとなる。また、即発ガンマ線解析にて行ったホウ素濃度測定に対しICP装置を用いた検証実験を計画しているため、この実験に関する諸費用が必要となる。さらにαオートラジオグラフィーのためには非脱灰形式での切片作成が適していることが分かり、この技術の習得および実験に対する諸費用が必要となる。
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