2020 Fiscal Year Research-status Report
がん放射線耐性克服に向けた新たな治療戦略開発;耐性細胞株で増加する分子に着眼して
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19K17258
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
金光 祥臣 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (30752943)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射線耐性細胞 / PDI / Prx4 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、独自に樹立した放射線耐性細胞株を資材とし、放射線耐性化機序と責任分子を明らかにし、がん放射線治療に実用可能なバイオマーカーと新規治療戦略を開発することを目的としている。これまでに口腔扁平上皮癌細胞株 SAS およびその放射線耐性細胞株である SAS-R を用いた解析から、protein disulfide isomerase(PDI)や peroxiredoxin (Prx) などの酸化ストレス応答関連タンパク質が SAS-R で増加していることを明らかにした。 今年度は、細胞内外の過酸化水素除去能を持つことが知られている Prx4と放射線耐性能との関係を明らかとするため、Prx4 ノックダウン SAS-R 細胞株および Prx4 過剰発現 SAS 細胞株を作製し、これら細胞株の放射線耐性能を評価した。放射線耐性能評価の方法として、1ヶ月間のX 線 (1.5Gy) 連日照射を行い、10、20、30 日目の細胞数を計測した。その結果、Prx4 ノックダウンによる放射線耐性能の低下が明らかになった。一方で、Prx4 過剰発現による放射線耐性能の獲得は認められなかった。これは、Prx4 単独の発現増加のみでは放射線耐性能の獲得には不十分であり、他のタンパク質と連関して耐性化に影響していることが示唆された。次に、放射線耐性能獲得に Prx4 による過酸化水素消去が関与しているかを明らかにするため、Prx4 ノックダウン SAS-R 細胞株に対する過酸化水素感受性試験を行った。その結果、Prx4 ノックダウンによって、SAS-R の過酸化水素耐性能が、消失することが確かめられた。これらの結果から、SAS-R で発現量が増加したPrx4は、放射線によって生じる酸化ストレスの細胞障害を抑制する役割を果たすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者の異動により、研究環境が大きく変化したことに加え、COVID-19の影響により、前任施設へ訪問できず、予定した研究が全く実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
Prx4と連関して耐性能に寄与するタンパク質の解明を進める。また、耐性化に至るまでの周辺分子の時空間的な動きを詳細に定量化し、評価を行うと共に、特異的阻害剤などの検証も進める。 申請時に予定していた、動物実験は、研究代表者の異動により、研究環境が大きく変化し、実施困難であることが見込まれる。 一方、プロテオーム研究で世界を牽引している、新潟大学医学部医学科システム生化学にて、実験を遂行できる環境が整いつつあるため、最新のプロテオーム解析アプローチから、耐性能に影響するタンパク質の詳細解明に挑戦する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、予定していた研究が全く実施できず、次年度に計画が延びたため。 研究環境等の問題により動物実験を遂行することが困難であるため、最新の機器・技術を用いたプロテオーム・メタボローム解析に使用する予定。
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