2019 Fiscal Year Research-status Report
血流定量画像解析による小径腎細胞癌の遺伝特性・臨床的予後・残腎機能予測の解明
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19K17272
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高尾 誠一朗 九州大学, 大学病院, 医員 (70803443)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小径腎癌 / 灌流画像 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年増加傾向の小径腎細胞癌の戦略として癌の治療効果と腎機能温存の2点がその予後に極めて重要なことが判明した。凍結療法はこの2点において一定の成果を上げてきたが、臨床上の課題も存在し、再発予測因子や術後腎機能予測の手段が確立していない。 腎細胞癌は発生に関する遺伝子変異の機序が判明しており、多くが血管新生増生因子に関わるものである。近年使用されている分子標的薬使用の観点からも腫瘍の発現遺伝子を把握することは重要であり、本研究により画像パラメーターで腎癌の遺伝子発現が推定可能となることにより、その臨床予後や治療効果が画像所見により正確に予測できるようになる。また、本研究で用いるCT・MRI(Perfusion, ASL)は正常腎(非腫瘍部や腫瘍と反対側)の血流量も評価可能であり、凍結療法における正常腎実質の障害による腎機能障害の程度を正確に予測できる可能性が高い。更に、同時に得られる可能性のある知見も多く存在する。遺伝子異常により腎細胞癌が生じた後の病態生理(腎血流・腎機能)がどのように変化するかは判明していない。本研究では正常腎と腫瘍側の腎を比較することで今までに知られていなかった新たな腎の病態生理が判明す る可能性がある 本研究はperfusion CTとMRIの画像所見と凍結療法時に採取した余剰検体から画像と遺伝子発現の関連を評価する研究である。 画像:対象の臨床情報とADC値や各種Perfusion CTの値を測定し、各種パラメータは腫瘍のサイズに相関した。 検体:腎細胞癌の生検組織からの遺伝子抽出に関して、解析に耐えるだけの抽出方法を確立し、シークエンスを施行し解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種画像のパラメーターを解析した。画像における横断的解析では腫瘍サイズと細胞外液、血管外腔、腫瘍あたりの血漿割合との間に負の相関が観察された。これら複数のパラメーターが腫瘍サイズと相関していることを解明した。現行の局所腎細胞癌に関しては、サイズが臨床上最も大事な要因となっているが、横断的解析の結果、サイズと分子・機能画像との間に相関が観察され、サイズの計測は分子病態に一定の解釈が関わることが示唆された。 腎癌の生検検体を用いたRNAの抽出方法に関しては、現在広く使用されているスピンカラムを用いた抽出では量と質共に解析できるレベルではなく、沈殿法を独自に改良し、腎細胞癌生検組織からの抽出の確立を試み、RNAの解析に耐えうる一定の質と量をえることに成功した。すでに一定量のRNAを抽出し、次世代シークエンスを施行し、解析中である。 ドライ解析では、まずはサイズとRNAのシークエンスデータの相関を調べた。複数のgene expressionの程度とsizeとの相関は見られた一方、enrichment解析では統計的に有意なgene setは存在しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAシークエンスデータは情報量が膨大であり、その中から臨床的意義のある情報を抽出し、検討する必要がある。現在はサイズのみの解析が終了したが、今後はまず、TCGAコホートをはじめとしたPublic dataをベースにRNAの網羅的解析を行う。そして、予後予測因子の可能性のある遺伝子を抽出する。さらに、これらの遺伝子群と先行研究を元に今後解析していくgene setを抽出・選択する予定である。 これらのgene setを元にした項目で、本研究でえられたデータから教師ありもしくは教師なしクラスタリング、もしくはEEMといったあらたなモジュールを用いることで、予後不良群となりうる集団を同定した後に、画像や臨床データとの関係性、有意差を調査していく予定である。さらに腫瘍の定量的なデータをenrichment解析に用いることで遺伝子発現と関連のあるパラメーターを探っていく。 また同時に、サンプルの検体数を増やし、学会発表や論文作成を行うことで新たな知見を得る予定である。
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