2019 Fiscal Year Research-status Report
生体内の脂質ラジカルを非侵襲計測する核医学分子プローブの開発
Project/Area Number |
19K17283
|
Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
山崎 俊栄 神戸薬科大学, 薬学部, 助教 (60636710)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ラジカル / 脂質 / 放射性同位元素 / プローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
脂質アルキルラジカル(脂質ラジカル)は、脂質過酸化の起点となる物質であり、種々の疾患との関連が報告されている。近年、肝がんモデル動物において脂質ラジカルの産生が増加していることおよび脂質ラジカル消去処置によりがん化を抑制できることが、in vitro蛍光検出試薬・治療化合物の開発により実証された。しかし、細胞レベルとヒト(動物)個体レベルでは周辺環境の違いから酸素分圧が異なる。さらに、生物個体での計測技術も未開発なため、生体内での脂質ラジカルの実態はいまだ不明である。そこで、生体膜内に発生した脂質ラジカルと化合物が化学反応により生体膜内に捕捉・蓄積されることで、高感度・定量的な脂質ラジカル検出を達成できるのではないかと着想した。そこで、本研究では、生体内脂質ラジカルを非侵襲検出する核医学分子プローブの開発を目的とする。今年度はじめに、脂質ラジカル反応性を示す放射性プローブの合成を実施した。具体的には、脂質ラジカル反応性化合物に対し、放射性同位元素としてI-125を導入するためのトリブチルスズ基を導入した標識前駆体を合成した。また、標識体の同定、機能評価に使用する非標識体も合成した。さらに、標識前駆体を用いて標識実験を行ったところ、高い放射化学的収率・純度で標識体を得ることに成功した。続いて、標識体を培養細胞に添加し、脂質ラジカル産生および非産生条件で比較したところ、脂質ラジカル産生条件で高い細胞内滞留性を示したことから、当初の目的とする機構による蓄積性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、プローブ合成について、標識前駆体・非標識体および標識体の合成を達成することができた。また、合成した非標識体用いた機能性評価や標識体を用いた良好な細胞滞留性を確認できた。さらに、健常マウスを用いた標識体の体内動態を把握することができ、当初の計画通りに研究が進捗したことから、おおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
合成した標識体を病態モデル動物に適用し、開発化合物の有用性を評価、検証する。病態モデル動物としては、がん移植モデルマウスを用いる予定であるが、脂質ラジカルの産生が亢進する条件(炎症など)についても探索しながら遂行する。また、集積性などに課題が生じた場合は、原因を考察し体内動態や反応性の観点から化合物の物性を変化させるなど設計にフィードバックし対応を図る。
|
Causes of Carryover |
当初計画していた実験が効率的に進行し、消耗品の購入を抑えることができた。また、年度末のコロナウィルス感染症に関連した学会開催の中止に伴い、旅費の支出が減少した。これらの理由により次年度使用額が生じたものの、次年度は開発した化合物の有用性を検証するために、動物実験を中心とした実験に使用する計画である。
|
Research Products
(7 results)