2019 Fiscal Year Research-status Report
蛋白輸送障害に着目したSchaaf-Yang症候群の分子機構の解明と治療法開発
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19K17308
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
堀 いくみ 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (00745929)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Schaaf-Yang症候群 / MAGEL2 / CRISPR/Cas9 / ゲノムインプリンティング / 父性発現遺伝子 / RT-PCR法 / in situ hybridization法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はSchaaf-Yang症候群 (SYS) の臨床像、発症メカニズムを解明することである。本疾患の原因は、父由来のMAGEL2の短縮型変異とされているが、我々は短縮型変異が単純な機能喪失ではなく、機能亢進型変異であるとの仮説を立てた。 我々はMagel2遺伝子をターゲットとしたCRISPRベクターを作成し、マウス受精卵に顕微注入を行い、1690番~1924番の235塩基欠失のフレームシフト変異を有するノックアウト (KO) マウスを作成した。 RT-PCR法にて、父由来の変異をヘテロ接合性に有するマウス (Magel2P:fs)の脳では変異mRNAのみが発現、母由来の変異をヘテロ接合性に有するマウス (Magel2M:fs)の脳では正常mRNAのみが発現し、ゲノムインプリンティングは保たれていることが確認された。また、ISH法にて、Magel2P:fsと正常対照マウス (Magel2+) の脳で、mRNAの分布を比較したところ、どちらも視交叉上核、室傍核に局在し、明らかな違いを認めなかった。 Magel2P:fsとMagel2+の体重を比較すると、生後10日目ではMagel2P:fsが優位に軽く(5.44 ± 0.12g vs 6.11 ± 0.13g, P=0.003)、乳児期の哺乳不良を反映していた。しかし、オスは生後8週以降、メスは生後4週以降、体重差を認めなかった。 ヒトで報告されているような、四肢の関節拘縮は明らかでなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに報告されたMagel2のKOマウスはMagel2全域を欠失している機能喪失マウスである。それに対して、我々はCRISPR/Cas9システムを用いてMagel2遺伝子の中間部分に欠失によるフレームシフトを有するマウスを世界に先駆けて作成した。現時点で、ヒトのSYSを再現した表現型は一部であるが、タンパクの解析や神経細胞の解析を進めることで、SYSの病態解明に重要な役割を果たすことが期待できる。よって、現時点で本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
①MAGEL2蛋白は、逆行性輸送に関与していることが知られている。MAGEL2変異に伴う逆行性輸送経路の障害がSYSの発症に関与していると推察している。Magel2P:fsとMagel2+から神経細胞を樹立し、逆行性輸送障害を示すマンノース6リン酸受容体の発現低下・細胞質全体への異常核酸の有無を確認する。 ②ヒトSYS患者では自閉症の合併も報告されており、マウスの行動解析を実施する。 ③日本人患者の集積を進め、遺伝型表現型相関を明らかにし、MAGEL2変異症候群の臨床症状の全貌の解明を予定している。
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Causes of Carryover |
予定よりもマウス作成にかかる費用が少なかったため。
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