2020 Fiscal Year Research-status Report
ファロー四徴症ラットモデルを用いた大動脈壁血管変性メカニズムの解明
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19K17340
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
関 満 自治医科大学, 医学部, 講師 (20822357)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ファロー四徴症 / ノックアウトラットモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
ファロー四徴症は根治手術後も進行性の上行大動脈拡大に伴う大動脈弁閉鎖不全や大動脈瘤/解離を起こし、致死的となりうる。病因として、大動脈壁の中膜嚢 胞性壊死による血管弾性低下と血管硬度上昇が考えられる。この組織学的変化、大動脈変性の機序解明を目的としてファロー四徴症ラットモデルを作成する。 Hey2ノックアウトマウスがファロー四徴症となることが報告されており、まず、CRISPR/Cas9を使った遺伝子変異によるHey2ノックアウトラットを作出すること から研究を開始している。自治医科大学再生医学研究部の魚崎英毅研究室にてCRISPR/Cas9を用いて、ファロー四徴症の原因遺伝子として知られているHey2遺伝 子をノックアウトさせた遺伝子改変ラットの作製を行なっている。Hey2はホモノックアウトでファロー四徴症となるので、Hey2 del/+ラットを導入し、Wistar ラットと交配し、Hey2 del/+ラットを繁殖、Hey2 del/+ラット同士を交配することで、Hey2 del/delラットを得た。ファロー四徴症ラットモデル作出のためのGuide RNA設計し、交配を行った結果、効率よくノックアウトされていた。現在、得られたマウスの表現型の確認を行っている。本研究では ノックアウトラットを作出することで、形態観察のみならず、マウスでは小さすぎて行うことができない新生仔~小児期における大動脈血管壁硬度、組織学的変 性の有無を評価することが可能となり、より生理的な研究に発展すると考えられる。研究全体としてはCOVID-19パンデミックにより予定通りの作業を進めることができていないため、次年度に今年度予定していた研究も含めて行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在はファロー四徴症ラットモデル作出のためのGuide RNA設計が終了し、交配してを得られたマウスの表現型の評価を行っている段階である。しかしながら、COVIDー19パンデミックにより予定通りの研究を進めることができておらず、進捗状況としては当初の予定よりもやや遅れいてるが、ノックアウトラットの交配とその解析を進めている段階である。次年度はラットモデルを用いた解析をより進めることが可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたファロー四徴症ラットおよびコントロールラットから胎生期を含め、経時的に大動脈組織を摘出する。大動脈壁組織はH-E染色及びElastica Van Giesen 染色により血管壁の中膜病変を主とした組織学的変性の有無、その進行の程度を解析する。さらにファロー四徴症の大動脈拡大に関わる中膜病変形成にはTGF-β シグナリングの異常が関与していることが示唆されており、大動脈壁におけるTGF-βシグナリング活性化の有無を検証することでファロー四徴症における血管 特性を明らかにする。より詳細に血管硬度を評価するために摘出した上行大動脈を長軸方向に切り開いてシート状とし、バイオマテリアル機能特性測定システム を用いて、血管の弾性と硬度を測定することも予定している。これらを組織学的所見と比較検討を行うことで、動物モデルにおいても血管壁の組織学的変性と血 管硬度の関係性を証明することが可能となる。 研究推進における課題としてはHey2ノックアウトラットの心臓表現型がファロー四徴症を呈さない可能性が残っていることである。その場合は他に報告のある ファロー四徴症関連の遺伝子変異を導入し、ラットモデルを作出することを考えている。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では当該年度にファロー四徴症ラットモデルの作製およびそのモデルの評価として、大動脈壁の組織学的検討や免疫染色、ウエスタンブロッティ ングによる病態の解析を行う予定としていた。COVID-19パンデミックにより研究に遅れが生じたため、該当年度の予算の一部を次年度に使用する必要が生じている。次年度はバイオマテリアル機能特性測定システムを用いて血管弾性と血管硬度の測定も行うこととしており、翌年度分として請求した助成金と合わせて 研究を進める。また、参加を予定していた学会が全てWeb開催となっており、計上していた旅費を使用することがなかったことも次年度使用額が生じた理由として挙げられる。旅費として申請した予算を次年度の研究成果発表に充てることとしている。
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