2019 Fiscal Year Research-status Report
血中一酸化炭素濃度とUGT1A1遺伝子変異を用いた早産児遷延性黄疸の増強予測
Project/Area Number |
19K17344
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
加藤 亮太 日本大学, 医学部, 助手 (60838481)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 極低出生体重児 / 早産児 / 遷延性黄疸 / UGT1A1遺伝子変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年6月~日本大学医学部附属囲矢橋病院に入院した極低出生体重児対象とし、黄疸の臨床経過及びUGT1A1遺伝子変異について検討中である。現時点で52例が対象となり検討を進めている。遷延性黄疸は、日齢14以降に光線療法を必要としたものと定義した。遷延性黄疸を認めた群(A群)と認めなかった群(B群)で、周産期背景(出生体重、在胎週数、体格)とNICU入院後の臨床因子(生後14日までの総ビリルビン(TB)、アンバウンドビリルビン(UB)の頂値及びその時の血清Alb値、初回の光線療法開始日齢、日齢14までの光線療法施行日数、母乳栄養の有無、経腸栄養開始及び確立日齢)について後方視的に検討した。経腸栄養確立日齢は、100 ml/kg/dayに到達した日齢と定義した。統計学的解析にはロジスティック回帰分析を用いた。【結果】遷延性黄疸を認めた症例は11例(21%)であった。両群共に全例母乳栄養であった。単変量解析を行い生後14日以内のUB頂値及びその日齢、日齢14までの光線療法施行日数がA群とB群間で有意差を認めた(p<0.05)。これらの項目で多重ロジスティック回帰分析を行った結果、遷延性黄疸に関連を認めた項目は、生後14日以内のUB頂値時の日齢(中央値 10vs4日)、日齢14までの光線療法施行日数(中央値 10vs4日)であった。[オッズ比、(95%信頼区間)、 P値]は [2.4(1.21~4.77)、0.0001 ]、[1.7(1.11~2.63)、0.0017 ]であった。生後2週までのUBの頂値時の日齢、生後2週までの光線療法を施行日数が遷延性黄疸の予測因子であった。このことから慢性ビリルビン脳症発症予防のためには定期的なUB値の確認が重要であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概要に記載したように、52例について黄疸の臨床経過を追跡し調査を行い解析を進めている。現在も症例の蓄積を継続し、より多数の症例で検討を行う予定である。現時点で解析を行った項目として、総ビリルビン値、アンバウンドビリルビン値、経腸栄養の開始日齢および経腸栄養の満量の到達日齢、出生体重、出生週数、血清アルブミン値についての検討を行った。従来では黄疸の増強因子と思われていた経腸栄養の開始日齢や出生体重については有意差は無かった。また、血清アルブミンは血清ビリルビンと結合することによりアンバウンドビリルビンを減少させ核黄疸の減少と強く関連があると報告されている。今回の検討で、血清アルブミンは遷延性黄疸の有無に大きく有意差が出ると予想していたが、今回の検討では有意差は認めていなかった。今後も症例を蓄積し、従来の黄疸危険因子についても再検討を進めていく。 一般的な黄疸の因子については解析が進んでるが、現時点ではいまだに一酸化炭素については解析ができていない状況である。従来使用している血液ガス分析で測定した血中一酸化炭素の測定は可能であるため、この値を用い検討することを視野に入れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現状と同じく、症例の蓄積を重ね検討の精度の向上を図る。従来では黄疸の増強因子と思われていた経腸栄養の開始日齢や出生体重については有意差は無かった。また、血清アルブミンは血清ビリルビンと結合することによりアンバウンドビリルビンを減少させ核黄疸の減少と強く関連があると報告されている。今回の検討で、血清アルブミンは遷延性黄疸の有無に大きく有意差が出ると予想していたが、今回の検討では有意差は認めていなかった。今後も症例を蓄積し、従来の黄疸危険因子についても再検討を進めていく。 一般的な黄疸の因子については解析が進んでるが、現時点ではいまだに一酸化炭素については解析ができていない状況である。従来使用している血液ガス分析で測定した血中一酸化炭素の測定は可能であるため、この値を用い検討する。一酸化炭素は揮発性が強く、検体採取後、迅速に測定を行う必要がある。血液ガス分析機器は病棟に常備しているため、検体採取後に迅速に一酸化炭素の測定が可能である。血中一酸化炭素は新生児の貧血やそれに伴う黄疸に強く影響する可能性があるため、血中一酸化炭素が新生児遷延性黄疸の増強因子になり得るかを中心に検討を行ってく予定である。
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Causes of Carryover |
研究当初は症例の蓄積を主に研究として行っていた。また、黄疸の増強因子を明確にするために既存の因子も改めて検討を行っていた。その因子の抽出及び解析が予想以上に難航してしまった。また、症例数に伴い膨大なデータの検討を行う必要があった。このデータの検討方法および統計解析に難渋していてしまい、一酸化炭素の検討が予想以上に遅れてしまい、測定に必要な試薬の購入に至らなかったために次年度使用額が発生してしまった。次年度からは一酸化炭素の検討を積極的に行っていく予定であり次年度の予算にはこれらの測定に必要な試薬等を購入し研究を進めていく予定である。早産児における黄疸の増強因子は不明な点が多く、既存の報告でも明確な因子の確定には至っていない事が上がられる。今回の検討で一酸化炭素を含めた黄疸のリスクが明確にできれば核黄疸の回避に大きく貢献が可能と思われる。
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