2019 Fiscal Year Research-status Report
乳児期の慢性的ストレスにより影響を受けた脳腸相関への迷走神経刺激による効果の解析
Project/Area Number |
19K17349
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
橋本 興人 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第四部, 科研費研究員 (70836197)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 乳児期ストレス / 神経炎症 / マイクログリア / 心身症 / プライミング / キヌレニン代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
アトピー性皮膚炎は乳児期におけるストレス性疾患の主要な一つであり、その後のアレルギー疾患だけではなく精神発達にも影響を及ぼすことが近年明らかになりつつある。我々は乳児期におけるアレルギー性皮膚炎ストレスによる思春期での精神面への影響を明らかにするため、まず初めに乳児期マウスを用いたオキサゾロン(Ox)誘導アレルギー性皮膚炎モデル(Oxマウス)を作成した。具体的には出生後(PD)2日目からPD30日目までに計10回のOx塗布を両耳に行った。結果、PD30日目のマウスの耳介部は著明に肥厚し、同部位の遺伝子発現ではTh2サイトカインであるIL-4,IL-13の発現が有意に上昇、さらに血清IgEの著明な上昇も認めておりアレルギー性皮膚炎の誘導が確認された。さらにPD30日目のOxマウスではコントロールマウスと比べ体重減少及び血清コルチコステロンの上昇を認めた。PD40日目のOxマウスの行動解析や脳内炎症サイトカインの発現を調べたところ、特にコントロールマウスとの差が認められなかった。しかしながら、Oxマウスの扁桃体領域においてマイクログリアの活性化抑制因子であるCD200R1の発現が有意に減少していることが明らかとなった。次にPD40マウスへのLPSの反応性を確認したところ、LPS刺激4時間後にOxマウスで脳内のIL-1β,IL-6やキヌレニン代謝酵素(IDO, KMO)の有意な発現上昇を認めた。さらにLPS刺激24時間後の行動解析(Sucrose preference test, Tail suspension test)では、Oxマウスで鬱様行動を示すことが明らかとなった。以上の結果から、乳児期のアレルギー性皮膚炎によるストレスにより脳内炎症反応に対する感受性が亢進し、さらなる刺激により脳内炎症サイトカインやキヌレニン代謝酵素発現の上昇を伴う精神行動への影響が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、乳児期のストレスとして母子分離を想定していたが、母子分離を行ったところ当初予想より死亡率が高く、実験を継続することが困難であった。そこで、乳児期アレルギー性皮膚炎を用いたストレス負荷に変更し実験を行った。乳児期アレルギー性皮膚炎モデルはこれまで報告はなく、我々が初めてモデルの確立を行った。さらには乳児期のアレルギー性皮膚炎によるストレスにより脳内炎症反応の感受性亢進を明らかにすることができた。また、さらなる刺激にたいする脳内炎症反応の増幅やキヌレニン代謝酵素の発現異常を伴った行動異常が誘導されること分子レベルで明らかにすることができたことは評価に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果より、乳児期のアレルギー性皮膚炎によるストレスにより脳内の炎症反応の感受性亢進が明らかとなったが、詳細なメカニズムに関しては依然不明であり更なる解析が必要である。さらに、抗炎症作用のあるミノサイクリンや迷走神経刺激を用いてストレスにより引き起こされる脳内炎症反応の感受性亢進を阻害することにより、追加の刺激に対する脆弱性の改善を目指す。
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Causes of Carryover |
研究結果の発表にかかる費用として今年度分を次年度分で使用する予定。
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