2019 Fiscal Year Research-status Report
Immune escape and exhaustion attributing to development of PTLD
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19K17352
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
山田 全毅 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 高度感染症診断部, 医員 (30445316)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | EBウイルス / 小児肝移植 / 移植後リンパ増殖性疾患 / 免疫チェックポイント |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞がin vitro でも炎症性サイトカインの刺激により、チェックポイント分子を発現する、という研究結果に着想を得て、EBウイルス(EBV)感染細胞における、チェックポイント分子の発現を解析した。これまでに当研究室で、臨床検体より得られた初代EBV感染細胞株(LCL)にインターフェロンを添加培養し、PD-L1やB細胞の成熟に関連する分子の変化を解析したところ、細胞表面に存在するPD-L1の発現やB 細胞表面分子の変化には一定の法則を認めなかった。原因としてLCLは、至適環境下で免疫細胞の干渉を受けることなく、すでにモノクローナルな腫瘍性増殖を起こしているため、チェックポイント分子を要する環境の再現が不十分であること、が考えられた。一方でEBV関連ホジキンリンパ腫の発症に先行して、末梢血中B細胞のPD-L1が増加することが報告された。そこで、小児肝移植後に発症した移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)のリンパ節、および発症前に数回にわたり採取された末梢血中のB細胞を解析した(N=1)。本例により、リンパ節内のB細胞の50%はPD-L1を発現しており、その形質は濾胞性の制御機能を持つB細胞(CD19+CD20+PD-L1+CD38+CD138-CD23+-)であることが示唆された。また末梢血中PD-L1陽性細胞はPTLD診断に先行して一過性の上昇を認めたものの、PTLDの発症に伴う上昇は確認できなかった。 上記所見とT 細胞の免疫応答および疲弊をより詳しく解析するために、ヒト化マウスにEBVを感染させることでPTLDモデルを作成した。過去の報告から一定の確率でPTLDのモデルマウスが作成できることは報告されていたが、本研究では、免疫抑制薬が、細胞疲弊を助長したり、EBV感染細胞の免疫逃避機構やPTLDの発症に与える影響を解析したりている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まずLCLを用いたEBV感染細胞の変化の解析を行ったが、炎症性サイトカインによるLCLの刺激実験では、一部のLCLでしかPD-L1の発現変化が見られなかった。原因として、臨床検体であるLCLの形質が均質でなく、さらにin vitroで行うサイトカイン刺激試験には、生理的に存在する濾胞での細胞間干渉が存在しないことなどが考えられた。 現象論を確認する意味で、1例ではあるが、臨床検体の縦断的な解析を行うことができた。これによりリンパ組織中と末梢血中のEBV感染細胞が濾胞性の制御性B細胞(CD19+CD20+PD-L1+CD38+CD138-CD23+-)に近い形質を持つこと、これらの細胞は末梢血中にはほとんど存在しないこと、がわかった。EBV感染細胞の免疫逃避機構を考えるうえで重要な所見であると考えられるため、今後も症例の集積を期待したい。 ヒト化マウスにEBVを感染させPTLDを再現するモデルは、リンパ組織での評価を行えるという点でEBV感染細胞の免疫逃避機構や免疫チェックポイントの研究に非常に有効と考えられたが、現在二つの問題に直面している。PTLDの再現率が低いことと、過剰なT 細胞の疲弊が確認されたことである。生後6-10週のヒト化マウスにヒト幹細胞を移植し作成するヒト化マウスモデルではB 細胞の生着がT 細胞よりも早く、またB 細胞が維持されにくい特徴がある。現在マウスの体重変化だけではPTLDの発症が判断できず解剖時に腫瘍を認めた1例が存在するのみである。また幹細胞移植後の時間が長くなるにつれEBV非感染マウスでもT 細胞全体で疲弊が進行することが新たに判明した。異種間の移植による拒絶が否定できないため、HLA改変マウスの導入や、移植方法の変更を現在予備実験として行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
外的因子によるLCLの形質変化に関する実験は、想定した結果が得られていない。より生理的な、環境を再現するために、血中EBV陽性患者の末梢血単核細胞(PBMC)を用いた培養系を検討しているが、PBMC中のEBV感染細胞は数が少なく、またEBV感染細胞の形質を評価する系が確立されていないため、現在、RNA probeを用いた感染細胞同定とマルチカラーフローサイトメトリーの実験系の確立に取り組んでいる。 今後も、臨床検体とくにリンパ節生検を要した症例のPBMCの解析や血漿中エクソソームの解析を縦断的に行うことで、PTLDの発症を反映する末梢血中の変化の探索を継続する。 ヒト化マウスの実験系の改良計画として、HLA改変新生児マウスへの移植を検討している。HLA改変マウスは有望な実験試料であるがHLA適合幹細胞の取得が容易でないことが問題である。
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Causes of Carryover |
ヒト化マウスの購入・管理費用につき使用額の変更があった。本来購入予定であった免疫不全マウスは所属研究室がすでにほかの研究計画用に管理していたため、並列して実験を行った。しかしながら、進捗欄で述べたように、現モデルでヒト化マウス17匹の解析を行い、上記の問題点が明らかとなったため、現在は新たのPTLDモデルマウス作成に適したマウスの購入を検討中である(NOG妊娠マウス、NSGマウス、HLA改変NSGマウスのいずれかを検討中)。これらの費用を2019年度中に計上できなかったため、次年度使用額を変更した。
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