2019 Fiscal Year Research-status Report
遺伝性神経変性疾患に認めるtRNA由来小RNAの生理的・病理的意義の解明
Project/Area Number |
19K17366
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
井上 真紀 大分大学, 医学部, 医員 (20726913)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 橋小脳低形成 / tRNA fragment / 神経細胞死 / p53 / PKM2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、CLP1遺伝子変異によって発症する橋小脳低形成10型における神経変性の病態分子機構の解明を目的としている。CLP1はtransfer RNA(tRNA)代謝に関連するRNAキナーゼであるが、CLP1の機能異常によりtRNA由来の小RNA(tRNA fragment)が細胞内に蓄積することが分かっている。申請者は、CLP1遺伝子変異により細胞内に蓄積するtRNA fragmentのうち、チロシンtRNA前駆体から生じる5 '側のエクソン断片(5' Tyr-tRF)ががん抑制因子p53の過剰な活性化を介して神経細胞死を惹き起こすことを見出した。5' Tyr-tRFによる神経細胞死の分子機構解明のため、5' Tyr-tRFと結合するタンパク質をDARTS(drug affinity responsive target stability)およびプロテオーム解析を用いて検索し、PKMを特定した。PKMにはPKM1とPKM2というアイソフォームが存在するが、ゼブラフィッシュに5' Tyr-tRFとそれぞれのPKM mRNAを同時にインジェクションするとPKM2 mRNAが特異的に5' Tyr-tRFの神経細胞死を抑制した。また、プルダウンアッセイ法で5' Tyr-tRFがPKM2に直接結合することを確認した。現在、ゼブラフィッシュや神経芽細胞株、CLP1遺伝子変異細胞などを用いて、5' Tyr-tRFがPKM2に作用してp53を活性化するメカニズムについての研究をすすめている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、5' Tyr-tRFと結合するタンパク質の同定を目的とした。当初、DARTS(drug affinity responsive target stability)法とプロテオーム解析で検出したタンパク質は多く、そこから5' Tyr-tRFと結合する候補分子を同定することは困難であった。そこで、SILAC(Stable Isotope Labeling by Amino acids in Cell culture)法をDARTS法と組み合わせることで、5' Tyr-tRFと結合する分子としてPKMを同定できた。PKMにはPKM1とPKM2というアイソフォームが存在するが、ゼブラフィッシュ胚に5' Tyr-tRFとPKM1 mRNAもしくはPKM2 mRNAを同時にインジェクションを行うという手法を用い、5' Tyr-tRFによる神経毒性にPKM2が関与することを簡便にスクリーニングできた。
|
Strategy for Future Research Activity |
5' Tyr-tRFがp53の過剰な活性化を介した神経細胞死を起こすメカニズムにおいて、PKM2の関与を示唆した。今後は5' Tyr-tRFがPKM2に結合すると、どのようにp53が活性化されるのかについて検討を行う。またCLP1遺伝子変異による神経細胞死にPKM2が有効に働くかを調べていく。
|
Causes of Carryover |
5'Tyr-tRFが作用するタンパク質をスクリーニングする際に、in vitroとin vivoで検証を行う予定であったが、in vivoでの検証が先に上手くいったため、そちらを優先して実験を行った。そのため、in vitroで遺伝子導入するための試薬や抗体を購入する予定の資金は次年度にうつして、使用することとした。
|
Research Products
(2 results)