2020 Fiscal Year Research-status Report
早産児の代謝特性に着目した脳性麻痺への細胞治療研究
Project/Area Number |
19K17372
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
田中 えみ 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (60823581)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 早産児 / 低酸素性虚血性脳症 / 脳代謝 / 脳性まひ / 細胞治療 / 新生児脳梗塞 / 低分子代謝物 / イメージング質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、早産児の脳代謝物の組成および虚血性脳障害における反応性の特殊性を理解し、適切な細胞治療プロトコールへつなげることである。
今年度は正期産児の虚血脳障害モデルでの低分子化合物の変化を調べるため、メタボローム解析およびイメージング質量分析を行った。 日齢12の脳梗塞モデルマウスを作製し、傷害48時間後に臍帯血由来CD34陽性細胞(CD34)または臍帯由来間葉系幹細胞(MSC)を静脈内投与した。虚血半球脳では、アミノ酸が上昇し、TCAサイクル中間代謝物やサイクルに関与するグルタミン酸等が低下するという結果を得た。しかしながら細胞治療での改善はクエン酸で認める以外、わずかであった。 一方でイメージング質量分析で微量検出と分布の可視化を行ったところ、より傷害と治療の変化が明らかになった。特にグルタミン酸は、梗塞中心部の信号強度が低下することはメタボローム解析と一致したが、梗塞周辺部は著明に上昇した。細胞治療は梗塞中心部の信号低下を改善するには至らなかったが、MSCは梗塞周辺部の上昇を有意に改善した。このような変化はカルニチンにおいても同様に梗塞周辺部に顕著であった。 メタボローム解析およびイメージング質量を組み合わせた手法は、脳虚血障害への有望な治療の探索にも有用であると示唆され、今後早産児脳障害モデルで応用していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
早産児脳障害の対比となる、正期産児モデルでの低分子代謝物の変化を明らかにでき、また有用な手法について報告した(Tanaka et al., Scientific reports 2020)。 前年度に早産児脳障害モデルを確立しており、今後の解析は進めやすい状況にあり、順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は早産児脳障害および細胞治療での低分子代謝物の変化を明らかにしていく。本年度行った正期産児モデルとの対比、また既報のあるサイトカインの変化とも対比させ、早産児脳障害および脳性麻痺への適切な介入について考察していく。
|
Causes of Carryover |
育休を経て復帰の際、新型コロナウイルス感染症の影響で保育開始の遅れがあったこと、大学内での研究縮小や現地に赴く学会参加を控えたことが挙げられる。 次年度以降、支援員を雇用することで研究遂行をスムーズにし、多くの解析を行う予定である。
|