2020 Fiscal Year Research-status Report
プラダーウィリー症候群の成人移行期における包括的な治療指針の構築
Project/Area Number |
19K17375
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
大戸 佑二 獨協医科大学, 医学部, 助教 (60448868)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プラダーウィリー症候群 / 成長ホルモン補充療法 / 性腺ホルモン補充療法 / トランジション / 甲状腺機能低下症 / 骨密度 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラダー・ウィリー症候群は、新生児期の筋緊張低下および哺乳障害、幼児期からの過食と肥満、発達遅延、低身長、性腺機能不全などを特徴とする症候群であり2015年2月に指定難病に加えられた。過食はプラダーウィリー症候群の主要な症状で、その原因は満腹中枢の障害に起因すると推測されている。また基礎代謝が低く、運動能力も低いことから、体重は増加の一途をたどり、20歳頃から糖尿病の合併率が高くなる。過度の肥満は睡眠時無呼吸症候群や高血圧、動脈硬化等の症状も引き起こす。 プラダーウィリー症候群は年齢とともに病像が変化するのも特徴の一つであり、学童期になると執拗さ、頑固さ、こだわりや思い込みが強くなり、周囲とのトラブルが多くなる。かんしゃく等の感情の爆発がみられることもあり、性格や行動の問題が年齢とともに強くなる。以上のことからプラダーウィリー症候群の管理は小児期から学童期、成人期に必要となるが現在の日本では成人例も含め小児科での管理がほとんどであり問題となっている。そのため当研究ではプラダーウィリー症候群のトランジションを主な研究対象としている。 トランジションが困難な理由として、その多彩な合併症が挙げられる。様々な内分泌学的合併症があり、具体的には高度肥満による糖尿病や睡眠時無呼吸症候群、性腺機能低下症に伴う骨密度の低下がある。また下垂体機能低下症の合併症に関しても不明なことが多い。そこで今回の研究では、プラダーウィリー症候群の甲状腺機能について研究、発表を行い2019年に論文化することができた。また、成長ホルモン治療における骨密度の影響についてIPWSOという国際学会で海外発表を行い、現在論文投稿中である。糖尿病の合併などに関しても2020年に学会発表を行い、今後論文化を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べたように当研究ではプラダーウィリー症候群のトランジションを主な研究対象としている。成人期以降の管理の要点として、成長ホルモン治療や性腺ホルモン補充療法が挙げられる。 現在、日本ではプラダーウィリー症候群の成人における成長ホルモン治療は認められておらず、成人成長ホルモン分泌不全症に適応は限られるが、成長ホルモンの分泌能を評価する必要がある。今回の研究では、小児期において成長ホルモン治療を終了した患者に対して、一定の間隔をあけた後に負荷試験による評価を検討したが、該当する患者が少ないこと、またコロナ禍で入院精査が困難であったことから評価が困難であった。 性腺ホルモン補充療法に関して、その治療意義である骨密度の評価に関してはIPWSOという国際学会で発表を行い、現在論文を投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
トランジションが困難な理由として、合併症の管理が困難であることが挙げられる。しかしながら、合併症に関し海外データはあるが日本人プラダーウィリー症候群データは少ない。そこで今回の研究ではその合併症の機序や頻度、その治療などの現状を一つ一つ明らかにし、小児科医のみならず精神科医、循環器内科医、呼吸器内科医、糖尿病内分泌内科医、整形外科医と様々な診療科でプラダーウィリー症候群の診療を行えるような環境調整を行えるシステム構築を目指していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で計画していた検査が全くできずに研究が進まなかった。また日本国内や海外での国際学会における発表などがすべて不可能になってしまったため次年度使用額が生じた。 今後の研究ではこれまでに実現できなかった検査や国際学会における発表を進め論文作成を進めていく方針。
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