2019 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌由来物質である短鎖脂肪酸/GPR41を用いた新規肝細胞癌治療戦略の開発
Project/Area Number |
19K17395
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
西川 雄大 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 医員 (30835773)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 短鎖脂肪酸 / GPR41 / HDAC |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,腸内細菌叢の分布の違いでプラチナ系抗癌剤の効果に差があることが報告されている.われわれはこの原因が,「腸内細菌叢の偏移による短鎖脂肪酸濃度の違いによる」という仮説のもと,cisplatinによるアポトーシス誘導作用を,短鎖脂肪酸であるプロピオン酸が有意に増強することを,FACS分析およびcaspase-3タンパク質の断片化/活性化効果で確認し,ヌードマウスを使用したxenograftモデルでの腫瘍発育抑制効果で証明した.さらに,このアポトーシス増強機序が,プロピオン酸のGPR41を介する汎ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害作用によるTNFαの発現上昇であるという機序を解明し報告した.しかし,その詳細なメカニズムは解明出来ず,今後の検討課題となった.よって本研究より,短鎖脂肪酸/GPR41/HDAC阻害に連なる分子メカニズムを解明することを本研究の目的としている.課題:①HegH2培養細胞に,cisplatin(25μM)及びプロピオン酸(1mM)を共添加することで,HDAC3,4,5,6,8の発現がcontrolと比較して有意に減少する結果を得ることが出来た.そこで,HDAC3,6に対する阻害剤を用いることで,アポトーシスの指標である,cleaved caspase3が上昇することを確認した.しかし,現時点ではGPR41の下流のシグナルとして,MAPKkinase系などを解析したが,明確な経路を見出せなかった.課題:②HDAC3/6のsiRNAをHepG2細胞で行い,siNegと比較して,cleaved caspase3の発現が有意に上昇する事を本年度は見出すことが出来た.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロピオン酸の阻害のターゲットとなるHDAC阻害が3/6であるという候補を見出す事が出来た. また,実際にsiRNAを用いた実験系でもシスプラチンの作用の増強を見出せた.そのため,おおむね順調な進展と考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
実際に,プロピオン酸の下流のシグナル経路を見出したい.そのために,種々の阻害時を用いて,プロピオン酸によるアポトーシス抑制が可能な経路と,それに伴い抑制されたHDACの発現量が改善される経路を確認する.また,短鎖脂肪酸である酪酸でもHDAC3/4/5/6/7とプロピオン酸より強力にHDACを抑制する事を見出す.酪酸も並行して実験を進める.
|