2020 Fiscal Year Research-status Report
膵線維化および膵発癌過程における膵貯蔵レチノイドの役割
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19K17396
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
小澤 範高 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (60761450)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 慢性膵炎 / 膵線維化 / 膵癌 / 膵星細胞 / レチノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
膵星細胞は膵臓での慢性炎症に伴い活性化し、レチノイド(ビタミンA)を含んだ脂肪滴を徐々に失うとともに、サイトカインやコラーゲン等を産生し膵線維化に深く関わっている。膵癌やその発生母地と考えられる慢性膵炎は膵線維化を病理学的特徴としており、膵星細胞はそれらの病態進展において中心的役割を果たすと考えられている。申請者らは、膵貯蔵レチノイドが膵臓の病態に及ぼす影響について遺伝子改変マウスを用いた実験を行っている。 これまで、レチニルエステル合成酵素(LRAT)欠損マウスの膵レチノイド貯蔵につき解析し、モデルとしての有用性を検証するとともに、セルレイン反復投与による慢性膵炎・膵線維化モデルにおける野生型との差異について解析してきた。肝臓での実験結果から想定された通り、LRAT欠損マウスでは対照マウスと比較して膵貯蔵レチノイドが有意に減少していることが確認された(HLPCを用いて測定)。セルレイン反復注射による慢性膵炎・膵線維化モデルにおいて、血清アミラーゼおよびリパーゼは LRAT欠損群で有意に高値であった。また、膵組織mRNAの比較では、線維化マーカーであるTimp1がLRAT欠損群において有意に発現が高値であった。上記実験結果より、LRATの欠損により慢性膵炎、膵線維化が増悪することが示唆され、膵組織におけるレチノイド量の差異が、膵の病態に影響を与える可能性が示された。 また、膵発癌実験に用いている遺伝子改変マウス(Pdx1-Cre:LSL-KrasG12D)において膵腫瘍の発生が確認され、さらにLRAT欠損またはp53R172Hを組合わせた遺伝子改変マウスを作製し解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、セルレイン反復注射による慢性膵炎・膵線維化モデルのさらなる解析を行った。また、膵発癌実験に用いる遺伝子改変マウス(Pdx1-Cre:LSL-KrasG12D)において膵腫瘍の発生を確認するとともに、LRAT欠損またはp53R172Hを組合わせた遺伝子改変マウスの作製をすすめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Kras遺伝子変異を有する膵発癌モデル動物の作製を順次進めていく。
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Causes of Carryover |
来年度は最終年度となり、更なる詳細な実験を計画しており、令和2年度以上に費用が必要となると考えられ、次年度への繰り越しが生じた。
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