2020 Fiscal Year Research-status Report
腸管粘膜傷害におけるプロスタグランジン輸送タンパク(SLCO2A1)の役割の検討
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19K17408
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
西田 裕 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (60804705)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | SLCO2A1 / 非特異性多発性小腸潰瘍症 / プロスタグランジン / マクロファージ / NLRP3インフラマソーム / マウスモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
DSS腸炎モデルでは、Slco2a1-/-マウスが野生型マウスに比べ腸炎が悪化した。それらの腸管組織のマイクロアレイ解析の結果から、NLRP3に焦点を当てDSS腸炎の炎症を評価したところ、前者でmature-IL-1β、cleaved-caspse-1、NLRP3の蛋白発現が亢進しており、インフラマソームが活性化していることが示唆された。またマクロファージの関与が示唆されたため、骨髄マクロファージをLPSで刺激したところ、mature-IL-1β、cleaved-caspse-1、NLRP3の蛋白発現が亢進した。 マクロファージのSlco2a1欠損が腸炎を悪化させているかどうかを確認するため、Lysozyme MSLCO2A1ノックアウトマウスと野生型マウスのDSS腸炎モデルを作成したところ、前者で腸炎が悪化し、腸管上皮SLCO2A1ノックアウトマウスでは、野生型マウスと比較して腸炎は軽減しており、マクロファージのSlco2a1が炎症に重要な因子であることが示唆された。 Slco2a1欠損によるPGE2の濃度変化をELISAにて行った。Slco2a1-/-マウスと野生型マウスのDSS腸炎モデルにおける腸管の上清では濃度差はなく組織内のPGE2の濃度は前者で有意に高かった。またPtgs1, Ptgs2, HbgdのmRNAは、前者で有意に低値であった。さらに骨髄マクロファージをLPSで刺激したところ上清ではPGE2の濃度上昇を認め、細胞外/細胞内PGE2濃度率は前者で有意に高かった。またDSS腸炎モデルの粘膜固有層マクロファージでは、Ptgs1, Ptgs2, HbgdのmRNAの発現が低下していた。これらの結果から、マクロファージのSlco2a1欠損が原因で、PGE2の細胞内への輸送が障害され、PGE2の代謝が低下し、マクロファージ周囲のPGE2濃度が上昇したと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Slco2a1-/-マウスでは腸炎が悪化し、マイクロアレイの結果から、NLRP3インフラマソームに着目した。Slco2a1-/-マウスではNLRP3インフラマソームがより活性化し、腸炎が悪化していると考えられる結果が得られ、NLRP3インフラマソームの阻害薬投与により、腸管の炎症が軽減した。 またマイクロアレイの結果から、マクロファージの関与が示唆され、マクロファージによる実験を行った。腸管粘膜固有層のマクロファージではmRNAの抽出は可能であったが、蛋白抽出をするほどの量がとれないことから、BMDMsにて評価することに切り替えた。BMDMsをLPSで刺激すると、インフラマソームが活性化していることが示唆される結果がえられている。 腸管やマクロファージにおけるPGE2濃度や、PGE2の代謝に関わる遺伝子のmRNAの発現に関する結果は得られた。Slo2a1-/-マウスにおいて腸管組織内のPGE2濃度の上昇と、マクロファージ周囲のPGE2濃度上昇を認めており、SLCO2A1の細胞内へのPGE2の取り込みが低下し、代謝が低下していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
腸炎悪化の原因は、インフラマソームの活性化が関与していると考えられ、腸炎悪化しているSlco2a1ノックアウトマウスの腸管では、PGE2の上昇を認めているという結果が得られている。マクロファージの結果と合わせると、マクロファージのSlco2a1欠損が原因で、PGE2の細胞内への輸送が障害され、PGE2の代謝が低下し、マクロファージ周囲のPGE2濃度が上昇したと考えられる。 以上より、腸炎悪化の機序として、PGE2の濃度上昇が、マクロファージのインフラマソームを活性化させることが予想され、DSS腸炎やBMDMsへの、PGE2やインドメタシン、EPレセプターのアンタゴニスト・アゴニストなどの投与を行い、新規治療薬探索を行っていく。腸炎悪化においてSLCO2A1のトランスポーターの働きや作用を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
今年度の研究から、インフラマソームの活性化が腸炎悪化に関係していると考えられ、Slco2a1ノックアウトマウスの腸管では、PGE2の上昇を認めているという結果が得られた。また、マクロファージのSlco2a1欠損によって、細胞内へのPGE2の輸送が障害され、PGE2の代謝が低下し、マクロファージ周囲のPGE2濃度が上昇したと考えられる。 以上より、PGE2の濃度上昇が、マクロファージのインフラマソームを活性化させることで腸炎が悪化することが予想される。そのため今後は、PGE2やインドメタシン、EPレセプターのアンタゴニスト・アゴニストなどの投与を、マウスモデルのDSS腸炎やBMDMsへ行い、新規治療薬探索を行っていく予定である。
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