2020 Fiscal Year Research-status Report
潰瘍性大腸炎を惹起する初期血管透過性亢進のメカニズムの解明
Project/Area Number |
19K17414
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
西條 広起 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10794654)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 潰瘍性大腸炎 / DSS / miR-155 / Tenascin C |
Outline of Annual Research Achievements |
Ulcerative colitis(UC)は、再燃と寛解を繰り返す原因不明の難治性疾患である。長期間の寛解維持がQOLの向上に直結するが、現行の治療法で再燃防止を長期維持できている症例は少ない。申請者は、UCのモデルとして頻用されるDextran sulfate sodium(DSS)大腸炎マウスにおいて、粘膜内の血管障害が粘膜上皮障害を誘発し、その後の腸炎悪化に関与していることを報告した(Saijo et al. Lab invest 2015)。このことは血管構造の恒常性保持により長期間の寛解が維持できることを示唆している。 そこで本研究では、DSS投与によって粘膜障害が誘発されるワイルドタイプ マウスと誘発されづらいmicroRNA 155 ノックアウト マウスを比較し、DSSを投与しても早期血管障害が起こらないメカニズムを解析することで、どのようにして微小循環系の安定化が図られているかを解明する。 昨年度は、正常大腸の粘膜固有層表層の微小血管周囲に発現している細胞外マトリックスTenascin C(TNC)に着目し、腸炎発症過程におけるTNCの分布と役割を明らかにし、学術誌に報告した(Jikeikai Medical Journal 2021 in press)。その結果、TNCは、DSS大腸炎の進行とともに粘膜固有層深部にまで発現部位を拡大した。TNCの分布は、一時的に伸展した陰窩細胞の分布や低酸素誘導因子(HIF-1α)陽性細胞の分布と酷似していた。また、TNCに先行してIL-6とTNF-αのmRNA発現レベルが上昇していた。これらの結果より、発生や創傷治癒において組織構築を調整しているTNCは、低酸素状態、引張応力、炎症性サイトカインによって誘導され、腸管粘膜の恒常性を維持する可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度は、新型コロナ感染症の感染拡大に伴い長期間研究の中断を余儀なくされた。実験で使用するマウスも必要最低限まで減少させた。そのため実験を再開した際に、マウスの繁殖から再度行わなければならず、かなりの時間を費やしてしまった。 新規の動物実験を行うことは困難な状況ではあったが、これまでに採取していた検体を用いて、免疫染色やリアルタイムPCRを行って、前述した結果を得ることができ学術誌に報告した(Jikeikai Medical Journal 2021 in press)。
|
Strategy for Future Research Activity |
①WTおよびmiR-155 KOのDSS投与前後において、血管内皮細胞に内に存在するmRNAを増幅して、microarray法で網羅的に遺伝子発現比較解析を行う。 ② ①の遺伝子群から血管透過性に関与する遺伝子を抽出し、miR-155との関連性および相互作用(pathway)の明確化:血管の透過性は、VE-cadherinを介した内皮細胞間接着によって制御されている。②の遺伝子群からVE-cadherinを介した血管透過性制御に関与する遺伝子を探索し、miR-155との関連性およびpathwayをBioinformatics手法により明らかにする。
|
Causes of Carryover |
昨年度は、新型コロナ感染症の感染拡大に伴い長期間研究の中断を余儀なくされた。そのため、当初計画していたmicroarray法を用いた網羅的解析など費用のかかる実験を延期したため次年度使用額が生じた。
|
Research Products
(1 results)